チビ爺さんの体験談 №2                  .




父親を捜す ②  .



時代劇の俳優に父親の面影を求めて、その俳優の近くで働きたかったが東

映映画などに手づるなんぞ全くない。それに撮影所というところは作業者

の一般募集などしないと知った。それでは諦めざるを得ない。

 

それでも毎週日曜日は映画館通いは止めなかった。

熱狂的な月形龍之介ファンであった。 

 

そんな子供っぽい少年は、そのまま青年になる。こんな苦労知らずの青年

を心配してくれて、結婚相手を捜してくれる先輩がいた。自分では嫁さん

も探せないのを知って、捜してくれたのである。30歳の時である。

母もその働き者の女性を気に入ってくれた。しかし、新婚二人には、この

借家は狭かったし、母親と一緒の生活は難しい。母は姉に一時預け、二人

は近くのアパートに移る。今度は嫁さんの父親が心配して、畑の一部を宅

地に申請してくれて、今度は家を持つことが出来た。子供は二人。

36歳 十分幸せである。

 

このことで生活が大きく変化する。これまでは工場に通うにも、自転車で

10分だったが、それがバスと電車の交通手段の世話になることになる。

朝早く起き、急いで飯を食う。バスは時間が不規則になりがちである。

 

ある日、駅に着くと普段と違う雰囲気になっていた。駅のホームが異常に

混んでいる。踏切事故のため暫く車両が動けないという駅の構内放送が引

っ切り無しに流れていた。私鉄による振り替え輸送をやっているので急ぐ

人はその私鉄を利用してくれという。仕方がない。改札口へ戻ると今度は、

踏切事故の処理が済んで、間もなく電車が動き出すという。

ならば、振り替え輸送に行かなくても良い。またホームに戻った。

 

止まったままの車両に乗客が殺到する。ホームにいたのでは乗れなくなる。

近くのドアーから力任せに押し込んで乗った。でも直には発車しない。

次々に乗客が乗り込んできて、ぎゅう詰めになってしまった。体が自由に

動かせない。

 

その時である。股間がぎゅっと握られたような気がした。明らかに手だ。

周囲を見渡したが、手の感じと頭の位置から見て左前の親父さんらしいと

思えるが、こっちの腰も自由に動かせない。その手は確かに俺の股間をも

みもみしている。でも少し冷静になってくると、そうだとも言えないと気

付いた。

下ろしていた腕が、混雑で揉まれているうち、俺の股間にまで来て、安定

してしまったのかもしれない。親父さんは手を抜きたくて動かしているの

だが、結果的に俺の股間をもみもみしてしまう結果になったのかもしれな

いのだ。

 

私も、それほど嫌でもなくなった。なんか快感もある。

暫くそのままにしていた。親父さんも手を抜こうとしなくなった。

 

間もなく電車が動き出し、乗客全体がゆさゆさと揺さぶられて落ちついた。

私の股間の手も無くなった。何となく残念な気がして可笑しくなってしま

い私は一人でくすくすと笑った。そして、その親父さんの顔をじっくり見

ることが出来た。私より少し背は低い。中肉中背の爽やかな感じである。

髭剃り痕が誠に綺麗である。じっと見つめてしまって、瞬間目が合ってし

まった。

私は思わず会釈してした。親父さんも、微笑した様な気がする。

 

その親父さんの、爽やかな印象が記憶に残った。また会いたくなった。










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