想い出の新世界


                                         花栗 さん


その7



○上さんは、「てっちり」が大好きで、よく新世界の「づぼらや」へ連れて行ってくれまし

た。

「へー 初めてか。食ったことないの?」

と訊くので僕は正直に「うん」と答えますと、「そう」と、『そうか、この子は田舎の貧し

い育ちなのか。』と思ったかどうか、納得した様子でメニューを見て注文します。

○上さんは多少、見栄っ張りのところやモロモロの欠点は少しありましたが、僕と気

が合った一番の理由は、[裏表の無い人」だったからでしょう。

そして、含んだようなものの言い方をしない性格がまた、僕と合っていたのでしょう。

だから僕は、浮気はともかく、他のことは正直に話して付き合いました。

ただ、何かにつけて、それまで付き合って来た子の名をすぐ出すことが、僕の心に淋

しく刺さりました。

そのときも「○クちゃんが、この「湯引き」が好きやねん。いつも頼んでたわ」と、全く目

の前に座ってる僕の気持ちなど考えずに、嬉しそうに懐かしそうに「○クちゃんが」「○

クちゃんが」と僕に話すのでした。その度に僕の胸はキュッと、何か辛く淋しい気持ち

になるのでしたが、顔は無理して微笑んで、短い言葉で「へえ~」とか相槌のように合

わせていました。(胸はチクチクしながら)

○上さんに悪気があって○クちゃんの名を出すわけでは無いことはわかっているので

すが…。

新世界に出れば、○上さんは最終の11時半の電車まで何軒も梯子をする人でした。

酒はビールばかりで、そう強い方ではありませんでしたが、スナックの賑やかな雰囲

気が楽しくて仕方なかったのでしょう。何よりも一番の生きがいだったと云っても過言

ではないでしょう。

今振り返ってみて、そう思います。

スナックの扉を開けて入って行くときの、少し胸を張って笑みを浮かべた顔を思い出し

ます。

「クーさ~ん!」「クーさん♡」「まあ、クーさん♪」

と、フケ専の店では馴染の客がたくさんいたようです。マスターもまた愛想良く、オス

スメの肴を出してくれていたほどです。

フケ専の店では他の客にビールを注いで回るのが礼儀のようなものでした。

それで見ず知らずの初めての方とも会話しやすくなります。

キタのフケ専の店もそうでしたが、オオミナミ(新世界)は特に、それが常識のようでし

た。

僕もすっかり新世界のスナックに夢中になっていました。

毎週、土日が来るのが待ち遠しくてならないほどになっていました。

たいてい、土曜日の夜に〇上さんの家に行き、遊んでそのまま泊まり、翌朝の10時

頃から新世界へと出かけていました。

そんな楽しい日が続いていたある日曜日のことでした。

支度を済ませて、「さあ、これから出かけよう。」と靴を履きかけたとき、電話が鳴りま

した。

「誰やろ?息子やろか?」

と、いつもかけて来る息子さんかと思ったのでしょう。僕もそうかと思いました。

すると、それは違いました。大阪の子からだったのです。

「○クちゃんかいな!」

と、弾んだ○上さんの声に耳をそばだてながら、僕は上り口で背中で聴いていました。

「これから新世界に行こうと思ってるところやねん」

と言った後で、受話器の向こうで何と言ったのかはわかりません。

○上さんの声が「…うん」と、何か迷ってるふうでした。

そうして、それから「うん、うん」と相手の話しを聞いた後、「はーい。」と受話器を置き

ました。

そして済まなさそうに、それでいて嬉しい気持ちを隠し切れない顔をして、「○クちゃん

からやねん」と言った後、「○クちゃんが出ておいで言うし。久しぶりやし」と、もう心は

大阪の子の所に飛んでるふうで、目をキラキラさせたまま僕に謝ります。

「済まなんだ。澄まんよ~」

そう言う○上さんに僕は「うん。いいよ、いいよ」と言うのがやっとでした。

まるで小躍りでもしそうなくらいに嬉しそうにしている顔を見ると、それ以上言えません

でした。

電話の内容はわかりませんが、「付き合ってきた長さ」に入り込む余地がない思いで

した。

もう、「お父さん」と呼んで、好きになっていたから胸はシクシクする思いでしたが、一

人残された後、「今のうちならリセット出来る…。」そんな気持ちを抱いたかもわかりま

せん。

自分を励ますように。

予定の無くなった日曜日の昼。

僕は、ぽかんとした思いでした。秋の抜けるような青空を見上げていたら、何だか淋

しさを覚え、あらためて取り残された思いになりました。

後を追うように、僕も一人新世界へと、電車に乗りました。

『二人に出会うかもしれない。会ったら、どうしょう…。』と思いつつ。

新世界に着くと、出逢わないようにと思いつつ、逢いたい気持ちも湧き起こり、複雑な

気持ちになりました。

けれど、やはり、二人居るところに出会うことを避けていたのでしょう。

ジャンジャン横丁を抜けて見上げた「づぼらや」の提灯を、反射的に避けるように、動

物園の方角へ歩き始めていました。

当時はまだ公園が今のように整備されてなく、入口の大きな門もなく、無料で誰でも

入れたと思います。

サムソンなどの雑誌にも茶臼山がハッテン場として載ってた記事を思い出します。

木々の人目につきにくい、死角になる繁みも多くあったでしょう。

そういう記事を思い出し、僕は好奇心いっぱいで、一通り歩き周ると、派出所前の広

場で将棋を差してるのを覗いて見ようと思いました。

それは、差してる二人を輪にして囲むように見ている人たちの中に、タイプが居たから

です。もちろん、ノンケでしょうが。淋しい気持ちがそうさせたのでしょう。

将棋は子どもの頃にはよくしましたが、大人になってからは職場に差す人が居なかっ

たこともあり、ずっとしていません。ま、ヘボですが。

何となくタイプの人を見かけると、こういった、傍に寄れるチャンスがあるだけでも嬉し

いものです。

背中から近づき、斜め後ろへ動き、横顔を見ていました。将棋を見つつ、時々目を移

して。

けど、やはりノンケのようでした。

しばし目を移しては見て、もうどこか歩いて行こうと思ったときでした。

下げてた手の甲に、今、横に立った人の手が触れた感触が、不自然な気がして横を

見ました。

すると、何時の間に来てたのか、少し太りすぎてましたが僕のタイプが立っていまし

た。

映画館などでよくあるように、顔は前を向いたまま、手で確かめる仕草です。

僕はすぐにノンケではないと思いました。それは手の甲を付けてはすぐ離しと、何度

もしてきたからです。

そうして、ドキドキし始めたまま、相手の横顔を見ました。

すると相手も僕の顏を見ました。そして今度は甲ではなく、指先を握られました。僕の

気持ちを確かめるように。

僕はその顔をどこで見たような気がしつつ、握られた指で答えるように握り返しました。

するともう確認したのでしょう。引っ張るようにした手を離すと、「行きましょう。」と小さ

く囁き、先に立って歩き始めました。

僕は、迷う心で、ためらいが生まれたけど、誘惑に負けてしまいました。一瞬躊躇し

た気持ちを消すように、砂利をググッと踏んで後に続きました。

ドキドキする気持ちがどんどん大きくなって行きます。

それと同時に、〇上さんの顏が浮かびます。ついて来るように。笑顔のまま。

それでも前を行く年配者の背広の背に、未知なる欲望を見て追うように、好奇心と性

の欲望に負けて、〇上さんの笑顔が小さくなって行くようでした。

(これでいいのか?)と、自問自答しながら。

それは、若さというおさえが効かない性欲で仕方がないと云えば、あまりに自分に都

合の良い言い逃れであった事は間違いありません。

初め、派出所の傍にあるトイレに行きかけたが、さすがに止めたのでしょう。

着いたところは、美術館横の地下にある図書館のトイレでした。

慣れているのか、誰も居ないのを確認すると素早く奥の端の個室に入りました。続い

て僕が入るとすぐに鍵を落とし、何か時間が無くて急いてるのか、すぐに自分のベル

トを緩めました。

興奮してるのか、それとも太りすぎのためなのか、荒い鼻息をしてセカセカと後ろ向き

になり、ズボンを裾を折り曲げました。

そして、自らボタンを外した背広とワイシャツと肌着を一気に捲り上げ、「入れて」と、

前垂れを外したふんどしをずらしてお尻を突きだしたのです。

清潔に掃除されてるトイレでしたが、古いためアンモニア臭が小便器の方からして来

ます。

が、その少し鼻を突く匂いに興奮を覚え始めた頃でした。それは、京都の安い映画館

の頃からだったでしょう。

そして、狭いトイレの個室という空間が、密接さが、より、脳を刺激させるのでしょう。

まるで檻に閉じ込めたペットをこれからじわじわといたぶるような、サディスチックな性

の興奮も生んだことでしょう。

無防備な、大きな鏡餅二つのような尻が、今か今かと待っています。

僕もそうとう興奮していたと思います。

ベルトの音もためらわずにズボンを下ろすと、裾を捲ることなど考えもせず、すでに前

を透けさせてテントの張ってるパンツもひざ下まで下げました。充血しきったマラの先

は要求するように先走り液が出ていました。

カリを指で押しつぶしようにして溢れ出た透明な先走りをカリ首の下までまんべんなく

塗りました。

そして、片手で自分で尻を広げるようにして待っている体制の花芯へあてがうと、片

方の手で竿を持ち、もう片方の手でずれないように尻を広げて入って行くのがわかる

ように、摘まんだまま広げてる恰好で、徐々に埋めて行きます。

「ぬぷりん」と張ってた亀頭が、身を縮めるようにして中に隠れると、少し引いては押

すようにして、「ぬくぬー」と胴も入れてしまいました。

このとき「ああ~ん」と云った喜びとも諦めにも似た声を漏らすと、少し苦痛だったの

か、壁に両手を着き、顔を壁につけるように上げました。

太い短い首筋に、太いしわが出来、その首がイヤイヤをするように壁に付けたままの

おでこを左右に振り続けます。まるで、幼児のように。

「あっあ、あっあ、あっ、あっ。あんあん」

と、ほんとに幼児の横顔そのものでした。

半開きの口からは、涎が垂れて下あごへとゆっくり伝わっています。

それを片手で拭うと、濡れた指先を壁に付けたまま声を押し殺して善がります。

後ろからまるでいたぶり犯し続けてるようです!

僕の鼻息も徐々に荒くなって行きます!

「ぬくんぬくんきゅぐきゅぐ」

と、滑りの少し悪くなったところでいったん抜くと、すかさず口中の唾液を集めて亀頭

から棹の中ほどまで、たっぷりと垂れるほど塗り付けました。

そうやってまた抜き差しを繰り返します。

熱い肉襞が亀頭に棹にからみつき、うごめきます。

たっぷりと付けた唾液のマラが、狭い密室で、襞と擦れ合う度に、卑猥な音を反響さ

せ続けます。

ぐちゃぬんぬんぐちゃん ぬんぐぬんぐちゃ たぷ とぷん ぬぐぬぬん ぬんぬん…

その度に、それに合わせるように善がり声を漏らします。

顏を必死に、逃れるように。

それでいてむさぼるように。

「ああ~んぁぁぁ」

「ぐんなぁあ、あっ、あっあっ!」

「ひっ、ひっ、なっ、ぁぁああん、あっ、あひっ!」

いつしか腰を振り、僕の突くのに逆のリズムで!

「ひぐっ、あぐっ、おっ、あん、あっ、、、あ」

僕はもっと喜ばせてあげようと、両手で体を撫ぜ回します。揉むように、垂れた腹の肉

を掴むように。

垂れてユサユサと揺れる乳に手を伸ばし、その立ってる乳首を摘みます。

触れ合う肌を、全て快感へと導くように、撫ぜ、揉み、擦り、摘みます。

もっちりとした色白な肌が、うっすら桃色に変わっていました。

掴んでいた尻の、指の跡は、より赤く!

激しく突きながら腰を掴んでる両腕に力をグッと入れ、腸襞を擦ってる音のリズムも善

がる声も短く激しい音を反響させ、最後は僕の「出る!出る!出るぅぅ!!」に、答え

るような「ぁふあん!ぁぁふあぃぃ!あいぃ!うん!うん!!」と善がる声で果てました。

相手は半勃起のまま、出しませんでした。

年齢は70歳位だったでしょう。

体重は、100キロ近くあったかも知れません。背丈は155センチあるかないか程でし

た。

後で思い出したのですが、地方新聞に載っていた、隣の県のある村の村長によく似

ていました。

尋ねはしませんでしたが、素朴な話し方と意識して使ってる標準語の端々に、都会の

人ではないことがわかりました。

きっと急いでいたのでしょう。終ると慌ててベルトを抑えるようにしてまだ真新しい革靴

をキュキュと鳴らして階段を上がって行きました。駅はすぐでしたが、用事が待ってい

たのかも知れません。

僕を茶臼山で見かけて、「もしや」と思い、後を付けたようでした。

月に1,2度来ているようでしたが、僕もここには滅多に来なかったから、それ以後は

出会っていません。

お尻に入れたのは久しぶりでした。

○上さんと出逢う前に、近くの銭湯で知り合ったウケのお爺さん以来でした。

それゆえ、喜びもひとしおでした。

もう、いまさらどうしようもありません。○上さんの顏が、もう遠く遠くになってしまった

思いでした。

淋しさはあるものの、その場かぎりのセックスではあったものの、淋しさを埋められる

ものを見つけた思いでした。





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