想い出の新世界


                                         花栗 さん


その11




 まだ朝の九時過ぎだった。

僕は何だかそのまま真っ直ぐ帰る気にはなれなかった。

帰って、ぐっすり寝なおしたい気持ちはあったが、初冬の穏やかな青空の

下を少し歩いてみたかった。

それは、淫乱な世界をたっぷり楽しんだ後の、軌道修正したい気持ちであ

ったろう。

ジャンジャン横丁を抜けて、恵美須町から電車に乗ることにして歩き始め

た。

歩き始めると、急に空腹感を覚えた。

それで、暖簾越しに、誰かが美味そうに丼ご飯を掻き込んでるのにつられ

て、その暖簾をくぐった。

朝の味噌汁。そして、炊き立てのご飯は何より心にも温かく沁みる。

ピカピカのご飯に、顏を包む湯気に、故郷が、母の笑顔が浮かぶ思いだ。

ちょっぴり罰あたりな気がして掻き込む…。

 

 昨夜は何発抜いたろう。三回だったかな?個室のおじさんと二度したっ

け。あのおじさんのお尻は気持ちよかったなァ。

そんなことをぼんやり思い出しながら少しまたムクムクさせて、マルトミ

の店先の洋服を見ていた。

それからスマートボールのガラガラ流れ落ちて来る音を聴いていたら、だ

んだん眠気を催して来た。腹が満たされたからだろう。

タイプに出逢えるかもしれないと、茶臼山へ行こうと思っていたが、もう

早く帰って寝たくなった。

地下鉄へと歩いて行く途中、リヤカーの中で布団にくるまって、おじいさ

んがぐっすり眠っていた。

傍でおとなしそうな白い犬も。所帯道具一式下げたリヤカーの傍で。

 

        ◇                ◇

 

 目が覚めたら夕方近くだった。

冬の夕方は淋しい気持ちになる。

隣の部屋も、下も、日曜日でどこかへ出かけたままだ。誰も居ないからよ

けいに。鳴っているのは妙心寺の鐘か、淋しい胸を震わせた。よけいに淋

しさがつのる。

『そうだ、雅へ行こう!』と、急に思い立つとすぐに着替えて家を出た。

スナックは、「竹の家」に行くときのワクワク感とはまた違う楽しい気持

ちが起きる。

 

「いらっしゃい」

「あっ、菊ちゃん!」

「今、○上さんが来てたとこや。隣()に行ってるかもしれへん」

「みやこんとこや。さっきトイレに行ったら声がしとったワ」

マスターとお父さんが僕の顏を見るなり、そう教えてくれた。

そして、マスターが付きだしを小皿に用意しながらこっちを見てニヤリと

して云った。

「今日は一人や」

僕は心とは裏腹に、落ち着いたそぶりを見せて「そう」と言いながら、お

父さんからビールを注いでもらった。

小皿を手渡しながらマスターがフフフとした顔で云う。

「逢いたいやろ?」

図星を刺されて一瞬、コップの手が止まった。

隣に座ってる山本さんが「うふふ」と笑いながら手元のグラスに、氷を入

れてボトルを注ぐ。

氷の傾く音が、注がれるウイスキーの音と共に心地良い。

「菊ちゃん、チャンスよ!○クちゃんとケンカしたんやて。奪っちゃえ!」

とマスターがおしぼり振るようにして、けしかける。

お父さんは渋い声して笑っている。

かすかに○上さんの大きな笑い声が聞こえた気がした。胸が躍った。

 

「都」のマスターが「雅」に来て飲んでることもあるし、逆のときもある。

そういう行き来のある仲だったから、マスターが、トイレに行ったついで

にドアを開けて僕が来てることを告げたのだろう。

しばらくして、座ってる後ろのガラス格子戸が開く音を背に聴いた。

「おー、○上さん!」

そう顏を向けて言った戸口を振り向くと、○上さんが顔を覗かせていた。

「菊ちゃん、来てたの?」

そう言いながら入って来て、山本さんが一つ譲ってくれた隣の席に腰を下

ろした。

横顔に、透けた赤っぽい、相変わらずインチキ手品師みたいな眼鏡であっ

た。

が、やはり胸は喜びを隠せず、触れ合う膝も嬉しさのあまり少し震えた。

グラスを持っている手さえ、その指も爪も、甲に出来てる皺すべてが愛し

く思えるのだった。

 

 その晩、僕は○上さんの家に泊まった。

○クちゃんとケンカした内容を、スナックで訊いたよりも詳しく話してく

れたが、それは、どうでもいいような些細なケンカであった。

それがわかると、何だかバカバカしい気にもなった。「なーんだ、そんな

ことか」という、ガッカリとした思いでもあった。

きっと二つの心が僕の胸の内にあったろう。

 僕はその夜、初めて○上さんのバックに入れた。

「入れたことないんよ。○クちゃんも入れたりしいへんで。何すんのよ」

「入れるんや、入れるんや!」

と、酔ってる勢いもあって僕が半ば無理やりズボンを脱がせてお尻を丸出

しにさせる恰好にして行った。

それは、「ずっとあれきり僕を、二人でこれから大阪へ出かけようとして

それきり放っておいてからに!」といった、○上さんの弱いところを突い

たのだ。

何というズルさであったろうか。

「菊ちゃんを放っておいて○クちゃんに逢いに出かけてすまない」と云う

気持ちを知ってて、そこを攻めたのだ。

きかん坊のように「入れるんや、入れるんや!」と、かんにんしない僕に、

「仕方なく辛抱する」その気持ちを見抜いていて、計算ずくだったのかも

しれない。

 

ズボンを引っ張り脱がせ、パンツも毟り取るように脱がせた。

ガスストーブのまだ温まりきらない絨毯の上で、僕は寝間から持って来た

枕を腰に当てがわせ、僕は強引に犯すような気持ちだったろう。

「うっ、くぅぅ~!」

眼をつむり、口を尖らせて必死にこらえる顔に、荒っぽいことはしたくな

かった。出来なかった。

けど、入れたい盛りの頃だ。どうしても入れたかった。

それで、少しでも楽に入るように、少し深く入れては抜いてを繰り返し、

徐々に慣らして行って、ようやく根本まで埋めた!

そのときの喜びは、体中の毛穴も歓喜に震えただろう。大好きな人のお尻

に初めて根本まで入れたときの喜びだ。

皺寄せて眼を閉じたまま、首を横に、もがくようにしながら必死にこらえ

てるのを見ると、愛しくていじらしくて、食べてしまいたいほどだ。

長いこれまでの人生の中で、初めてでは無かっただろうが、普段の遊びの

中ではほんとに、お尻はしていないと思った。

初々しい気がした。それがまたより惚れさせた。

 

 しかし、○クちゃんとは些細なケンカであったから、すぐに仲直りはす

るだろうと思っていた。

案の定、そうであった。次の日曜日の朝にそんな電話があった。

「○クちゃんが出ておいで云うから、これから大阪に行くよ。」

と、もうすっかり○クちゃんに腹を立てていたことなど微塵もなく、声を

弾ませて云うのであった。

しかも、こう付け加えた。

「ぼくと○クちゃんとは、切っても切れない仲なんよ」

まったく、ガチャン!と受話器を置きたい気持ちだった。

繋がりそうで、また離れてしまった糸のような。そんな、もどかしい気持

ちであった。

嫉妬心もあったろう。確かに。

だけど、僕の悪い心の中に、「良かったね」という気持も無くは無かった。

それはでも、「竹の家」にまた行こうと思うワクワクする気持ちが湧き起

こるからだったかもしれない。

遊びたい年頃だから仕方ない。と云えば、あまりに自分に都合のいいこと

ではある。

 

         -              -

 

 その日はSM好きが集まったというわけではなかっただろうが…。

浴衣に着替えてトントンと階段を上がって覗いた初めの部屋で、まず見た。

まだSMは雑誌で見るくらいであったから初めて生身の体に縄が食い込んで

るのを見たときは、その苦しそうな表情など、全てがあまりにも生々しく、

興奮を堪えきれずにずっとマラは充血しきってて、はちきれんばかりにな

っていただろう。

でも、初めの部屋に居た人を見たとき、『どうしたのだろう?』と思った。

それは、四畳半の部屋に一人で居たのだ。胸と両腕を縛られた格好で、膝

着いて…。

手は浴衣の腰紐だったように思い出す。けど、胸を縛っていたのは、黒い

細い紐だったから、こっそり家から持って来ていたのだろう。

もし、タイプであったならそのままイタズラしただろうが。若すぎて手を

出す気にはなれなかった。

誰か縛った相手が来ると思ってしばらく様子を見ていたが、相手はなかな

か現れずで、その人も小さな声で呻いてるだけであった。

人が覗きに来るが、その部屋にはその人だけで、他には布団にも居なかっ

たから廊下を挟んだ中部屋へ行った。

すると大勢が寝ていて、一人寝てる人も居れば、思い思いに遊んでるカッ

プルも居て、ずっと隅々まで見ていると、うつ伏せの、バックからバコバ

コと浴衣の音と共に卑猥な音をさせてるカップルが居た。

そのうつ伏せで善がり声を上げてる人の腕が背中で縛られていた!

浴衣の紐でくくってるふうであった。

あんな恰好でバックからしてる姿を見るのはかなり刺激的だ。初めて見た

から興奮度は一気に上がって行った。

ただ、後ろから腰の動きが、紐を解いた浴衣で隠れていたからよく見えな

かった。

攻めてる男はタイプであったが、されてる方が少し若すぎた。

その顔にマラを咥えさせようと腰を持って行ってる男は、まずまずではあ

ったが。

興奮度が上昇するままに隣の大部屋、その隣の小部屋と見て回る!

足が地に着いていない!ワクワクどころじゃない。

さらに低い階段を上って行った。

電気を点けなくて一番明るい部屋にも何組かが舐り合ったり、しごいたり

喘いだりの最中であった。

もう誰かの口か尻に突っ込みたい状態のマラで落ち着きがない!

そして、その隣の狭い部屋の戸を覗いたとき、もう上昇しきった頭がクラ

クラするほどの興奮に陥って行った!

今さっき見たカップルの恰好で、下の腹這いの男がやはり後ろ手に縛られ

ていた!

興奮しきったままだったのは、バックを攻めてる男の尻もマラも、入れて

る尻の穴もクッキリと見えた!

縛られてる男が大きく喘ぐためか、丁度、取り出した手ぬぐいで口を縛ら

れてるところだった。

猿ぐつわというのだろう。

そのとき、その白髪に近い60代後半の人が「和尚さん、かんにん!かん

にんしてください…!」と、「和尚さん」と聞こえた。

責めてる丸坊主の男は、そのツルツルに近い頭を見ると、確かに、和尚に

見える。

が、その同じ歳くらいの「和尚」の顏には口ヒゲが生えていた。

『口ヒゲを生やしてる坊さんて、居るのか?』

そんな疑問を抱いたが、男はやはりほんとうに何処かの住職だったのかも

しれない。

「黙れ!」

「黙れ、黙れ!」

やや痩せ形の和尚の逞しい平手が尻を叩いた!

バシッ!バシッ!と尻を打つ音が、豆灯りの窓も無い部屋に響く!

叩きながら腰を器用に突く。

「ぐくくく~ ぬにぬにゅぅ」といった生温い音が聴こえそうなほどゆっ

くりと、埋めてたマラを張ったカリの先だけ抜かずに残して僕に見せた!

「入れて見るか?」

ニタリとした顔して僕を見た!

「ぇッ!?」

思いもよらぬ咄嗟で、興奮しきってる僕はまともに声も出なかった。

「ふふン」

小憎らしい顏して、まさにスケベエ顏でまたゆっくりとマラを埋めて行く!

赤黒く充血しきってる棹を紫にも見せてナメクジでも這いずり回った後の

ようにヌメヌメと鈍く輝かせて…!

波打ってる血管の起伏が、まるでほんとにナメクジの這ったような梅の木

の根っこに見える!

そんな棹が八重の桃の花を咲かせては窄める。

ぬぐぬぐぬぬにゅん ぬちゃぐぬ  ぬちゃぐぬぬ

突き出させた尻を叩きながら!

バシッ!

「イギッ!ヒッ!」

バシッ!

「あぐぅ!あががゥゥ!」

バシッ!

「煙草屋の後家に手を出しおってからに!」

バシッ!バシッ!

「あぐあぃあん、がんがぁぁんぐでぐがだぃ…」

「何を云うか!こいつか!この息子でものにしたんか!」

「堪忍して云うて、こいつめ!こんなに立ってるじゃないか!」

「こいつめ!こいつめ!」

バシッ!バシッ!バシッ!

「ぎひっ!あががぐァ!」

ずろぬろぐろぐずぬろ ずぶぬぐぬちぬちゃ

尻を叩くことでリズムを作ってるように、それに合わせて突く腰の、マラ

の浅く深くと攻める!

ときおりニヤリとして…!

「どうや?もっと欲しいのか?こげえヌルヌル出しおって。こいつめ!」

和尚は腰を掴むと、ズルヌルと動きを速める!金玉をビタビタと打ち付け

て!根本まで激しく埋め込む!

真っ赤になった尻が痛々しい。

なのに、白髪の男は感じていたのだろう。マラは立ちっぱなしで、先走り

がブラブラ垂れていた。手を離した凧の糸のように。

「ギヒッ!イギヒッ!」

眉間にいっぱい皺が寄るほど目をつむり、顏が真っ赤になりながら、意味

不明な声を上げながらも!

ぬどどどぬにぬにゃ ぬぐずぬぬぬ…

棹、カリの先、尿道口まで、マラ全体で直腸の温みを、快感を、味わい楽

しんでるように!

抜いては入れる濡れきった黒い根っこが粘る液を垂らし、その粘液が白髪

の男の尻の穴から、蟻の門渡りへと垂れて筋を作っている。そしてその粘

液が金玉の皺へと伝っている。

和尚が突くたびにブラブラ揺れて!

薄目を開けた白髪の瞳は、焦点が合っていない。空を彷徨っている。マラ

を立てたまま…!

後から後から切れ目なく先走り液を垂らして!

腿の弛みも垂れてる腹も縛られてる縄の間の、膨れてるオッパイも、和尚

がマラを抜き差しするたびに揺れる!

腹の肉がユサユサと!オッパイの乳首が!

オッパイも責められたのか?!あんなに乳首が大きく腫れて!

激しく腰を使っていた和尚が、どういうわけか棹を七分目ほど見せたまま

動きを止めた。

「うっぷぅー」

膨らませた頬の息を一気に吐いて壁を見た。

どうやら、出そうになって動きを止めたようだ。

すると、手を伸ばして白髪のベトベトのマラを掴んで擦り始めた。

まるで乳牛を搾るように。

縛られてる白髪の眼が、「ああ…」と云っている。

気持が良くてたまらないのだろう。

和尚の手の中で、転げ出しそうなほど張っている!

先走り液でグチョグチョ音を立てている!

「こいつめ!感じおってからに!」

「こいつで煙草屋の美代子を泣かせたのか!こいつで!こいつで!」

和尚の手から弾けそうなほど、ぐろんぐろんとしている!剥けきったたカ

リがパクパクと赤い口を覗かせる!

涎を溢れさせながら!

ずぐろんずぐろんと和尚の手が、持てあます!

まるで手の中で暴れてる真鯉だ!

と、猿ぐつわで苦しそうに喘ぎ続けていた顏が首を上げるようにした!

唾液でグッショリの猿ぐつわの隙間から一心に、悲痛な表情で!

虚ろな瞳に青空でも見てるように!

と、窮屈な首を縛られてる胸を体を、上下に揺すった!

「あがぐっ!ぐうぅうぅうっ!うぐあがああぁぁうっ、うっ!うがっ!あ

がっ!」

ドビュッ!ドビュッ!ビュビュッ!ビュッ、ビュッ!

敷布団の上に大量の精液を迸らせた!

と、そのマラをベトベトのまま片手にしたまま和尚が突き入れた!

激しい動きで!

「おおっ!おおっ!たまらんわい!」

和尚の弛んでる尻が腿が、脇の肉も揺れる!

チョビヒゲの尖らした口元の、頬も顎の下の弛みも!

ヌグニチャ ビチャヌチャ

激しい、激しい腰使いだ!

「こいつめ!こいつめ!」

グニチャヌチャ ネバヌチャ ビタビト タプタブ

「二度と手を出してみろ!こいつめ!こいつめ!」

グニュヌグ ズヌズヌ ビヌチャヌチャ

ヌグズメ ネグチャネチャ

「おまえはわしの女になるんじゃ!オソソん味を覚えさせてやる!毎晩で

もして欲しがるようにの!」

「おおう!ああ~~、いい!」

「ああ~!ああ~!!出る!出る!出すぞ!!出すぞ!!!」

 

和尚はまさに精も根も使い終えた顔でしばし夢見心地のようであった。

白髪の男が布団に放出した精液の匂いと、腸壁を擦る、ひなびた温泉のよ

うな、或いは滑り台のような匂いとで、僕は一瞬目の前に父親を思い浮か

べていた。どういうわけだか…。

八重咲きの桃の花が半濁白色に、とろとろと濡れているのを後に、僕は慌

てて部屋を出た。

僕はその場で飛ばしてしまっていたのだ。

その時のあまりにも気持ちの良さは、今も例えようがない。









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