北南さんの体験談 1                 .




起承転結


(一)



(起)

今、私は新しい小説を書いています。

前作「来し方を想う」を書き始めて半年ほど経ってからでした。

ふと、以前からお付き合いしていた人から聞いた体験談をこの世界で表現

したらどうなるだろう、と……。

 

そう思い始めると、いてもたっても居られません。もうこの年齢だ、自分

の性癖があの人に知られても構わないという気持ちになって、了解を求め、

書き始めてしまいました。

 

しかし、考えてみると、なんでこのように物書きにこだわるようになった

のか、不思議に思います。

子供の時には作文が好きな子供であったようですし、母が亡くなった時、

母が書きかけて残した、自分史をまとめ上げて、親類縁者に送ったことは

あったけれど、そこまでが私の物書きの能力の限界だったはずです。

 

小説を書こうという気持ちになった理由はいくつもありますが、一番大き

な要素になっているのは、私に文章の書き方のイロハを教えてくださった、

お師匠にめぐりあったからなのです。

 

(承)

「起承転結」

この熟語を再認識させてくださったのも、そのお師匠さんでした。

高校時代、漢文で漢詩を勉強したときに初めてこの言葉を覚え、社会人に

なって詩吟の同好会に入り、吟詠したり拙い絶句を作詩したりするとき、

「起承転結」はたえず私の思考の片隅にあって、道しるべの役割を果たし

てくれていました。

 

私が壮年期を迎え、日夜多忙な仕事に追い回されるようになって、吟界か

ら遠のいたのに合わせて、この四文字熟語はいつの間にか忘れ去られてい

ました。

それが、一昨年の今ごろ、半年ほど前にお付き合いが始まった師から教え

を受けるようになって、あらためて日の目を見るようになったのです。

 

お付き合いが始まったばかりのとき、自己紹介のつもりで自伝のようなも

のを書き送っていたところ、なかなか面白いから「老いのときめき」へ投

稿したらどうかと勧誘され、書き始めたのがきっかけでした。

 

そろそろ書き終わろうとしたころ

「今までよく頑張ったね、今度は小説を書いてみたらいかが?」

と勧められました。

「とんでもない、私にそんな大それたことが出来るはずはありません」

というおことわりに、

「大丈夫、私が見てあげるから心配しないで書いてご覧なさい」

と再三のお勧めをいただいたのです。

 

師からは、それまで投稿していた自伝に対しても「文中に漢字が多過ぎる

と読みにくい」とか「修飾文の重複に気をつけたら」といったことを指摘

され、しばしば事前に朱を入れていただきながらの投稿でした。

 

そして今度は、小説を書くにあたって「文章作成上、知っておけば役立つ

こと」をまとめて送ってくださり、「読点の打ち方の基本」を書き送って

いただく等、痒いところへ手が届くようなご指導をしてくださいました。

 

我欲が強かったというか、後期高齢者の甘えというか、どの様に表現した

らよいのか分かりませんが、結局そのお言葉とご指導に甘えて書き始め、

今日に至ったのです。

 

初めての小説のことは忘れることができません。

「老いのときめき」に投稿する小説ですから、どんな内容でも良いとは思

いませんでした。そのテーマを模索しているとき、以前、憧れていた娘の

担任の先生のことを自伝に書いたのを思い出したのです。

 

好きでたまらなかったその学年主任との絡みを苦心して書きあげ、添削し

ていただくために師に送ったところ、これが私の作品?と見間違えるよう

な素晴らしい短編小説になって戻ってまいりました。

そのなかには、私が書きたくても表現することができなかった、いくつも

の文節が挿入されていたのです。

 

その小説は、「文章作成上知っておけば役立つこと」とは違った色艶で、

しっぽり包まれていたのです。

経験の少ない私にはとても表現できない、うっとりするような語句が、キ

ラ星のように散りばめてありました。

この小説は「老いのときめき」へ私の処女作として掲載されたのでした。

 

語彙に乏しい私にはとても真似のできることではありません。

すっかり自信をなくした私がそのことを話すと、今度は折に触れ、メール

の端々に、濡れ場などの艶やかな表現を書き込んで送って下さるのでした。

合わせて字句の使い方ということで、「重複表現」「誤解されたまま使わ

れている慣用表現」「読み違えやすい漢字」なども事例を挙げて教えてい

ただきました。

                             (続く)










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