駒ケン界隈


                                         KE 爺さん

(2)


 東京のお盆は7月13日から始まりました。昨日は午後から仕事を休み、都内に住

む姉のマンションへお盆参りに出かけました。

午後1時少し前に職場を出て、ゆっくりと駒込駅に向かいました。昼下がりの駒ケン

の前を通ることは、めったにありません。

3日前に駒ケンに行ったメル友の情報によると、館内はなかなか繁盛している様子で

す。爺様たちは、やはり家族に心配をかけないように、昼間のうちに遊びに来て、夕

方は何食わぬ顔をして家に帰って行くのでしょう。

 朝は駒込駅から駒ケンまで、夕方は駒ケンから駒込駅まで、この50mほどの「駒

ケン・ロード」を通りますが、いろいろのお仲間達に出会います。私の「通勤性活」の

お楽しみゾーンの一つです。

 さて、昼下がりの「駒ケン・ロード」はどんな様子なのだろうかと、少しワクワクしなが

ら差し掛かりました。自慢ではありませんが、すれ違う人が駒ケンに入るかどうか、お

仲間であるかどうか、私には90%当てる自信があります。

 さて、通行人に混ざって候補第1号が駅の方からやって来ました。背が高く、がっち

りタイプの50代後半の大きなお父さんです。黒のポロシャツにベージュのズボン、黒

いカバンを提げています。身なりからして裕福そうな感じです。チラリッと目が合いまし

た。1秒間くらい、からみ合った視線が釘付けになりました。

『ピンポンッ!』

私の頭の中の合格のチャイムが鳴りました。通り過ぎ、そして振り返ると、おとうさん

はゆっくりと駒ケンへ入って行きました。

 そして、今度は第2号です。先ほどの人から、まだ20mぐらいしか離れていません。

白の作業服にリュックサックを肩にかけています。少し痩せ型の50代半ばのお父さ

んです。ちょっと寂しそうな感じで、トボトボと歩いて来ました。うつむいたまま、視線

は地面に向いています。私のタイプではありませんが、その雰囲気が漂っています。

素知らぬ顔で通り過ぎ、クルリと振り返りました。

『ピンポンッ!』

第2問も正解でした。

「2度あることは3度あるとは本当なのかな」、そんなことを思いながら駅前の信号に

近づいてきました。でも、まさかね、50mの短いう間に3人なんて、出会うはずはあり

ません。

 でも、彼はやって来ました。50代前半、ベージュの長袖シャツに大き目のショルダ

ーバッグを肩にかけています。地方から出張で東京にやって来たという感じです。真

面目そうな小柄なお父さんです。好感が持てます。

「パチパチッ!」

からみ合った視線が、2秒くらい火花を散らしていました。私のことを確実に記憶した

ことでしょう。お父さんはすましてスタスタと歩いて遠ざかって行きました。

信号は青の点滅です。急いで向こう側に渡りました。そして、すぐに振り返りました。

『あれッ!?』

お父さんはスタスタと歩いて行きます。駒ケンの前を通り過ぎようとしています。そし

て、さらに染井橋の方へ歩いて行くではありませんか。そして右に曲がってしまいま

した。やっぱり、3人目には出会いませんでした。

『う〜んッ!残念ッ!』

私は、直前まであんなに確信していた気持ちを押さえることができませんでした。

そしてしばらく信号の下にたたずみ、今歩いてきた「駒ケン・ロード」を、未練たっぷり

に眺めていました。たくさんの車が行き交い、やがて信号は再び青に変わりました。

『うんッ!?』

その時ですッ!あのショルダーバッグを肩にかけたお父さんが、なんと染井橋の角を

曲がって戻ってくるではありませんかッ!

『ピンポンッ!勝ったーッ!』

私は心の中で、こう叫びました。

もちろんお父さんは、私が見ているなんて少しも思わず、駒ケンの中へと消えていき

ました。

『ごめんね、お父さん!私のおかげで、お楽しみの時間が少し短くなってしまいました

ね!』

心の中で、こうつぶやきました。

♪いのち短し 恋せよ乙女(爺ちゃん) あかき唇あせぬ間に 

熱き血潮の 冷えぬ間に 明日の月日はないものを〜♪

私はこんな鼻歌を歌いながら、改札口を通り抜けていきました。

(おわり)




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