克爺さんの 体験談 №6           .




男色への道


(6)



夏の暑さも峠を越し、朝晩は涼しさを感じる季節になりました。

私にとってあの電車の中の出会いから、親父さんとの付き合いもやがて四

年近くになろうとしてました。

 

いつものように迎えに行くと親父さんは道端で袋を提げて待っていました。

乗ってくるなり「今日は何処か遠くへ行きたいな」と言ったので

行き先を決めてない私は、とにかく車を走らせたのです。

どこをどう走ったか定かではないのですが、高速の入り口が有ったので取

り敢えず下り車線に入り車をとばしました。

あまり話そうとしない親父さんに「何か有ったの」と問いかけても「いや

‥。」と言って黙ってしまいます。

暫く二人の間には会話が途絶え重苦しい空気が流れてました。

私は我慢出来ずに丁度出口が近付いたので、高速から一般道へと走らせ人

目のない所に車を停めました。

 

「親父さんどうしたの、何があったの?」

暫く黙っていた親父さんはようやく話し始めました。

私には聞く前から、良い話ではない事、そして最悪の事態になる事を何故

か予感してたのです。

 

親父さんと会ってから色々なことを教えて貰いました。

浅草の映画館、大番、上野の地下、駒健など男と遊ぶのにはいろいろな場

所が有るという事。

女と違って男と遊ぶ時はのめり込まないように、付き合っていても平気で

他の男と遊ぶから。

○○さんは真面目だからこの先心配だよとよく言われた。

 

私の予感は間違ってほしかったが的中してしまった。

知り合った頃待ち合わせの駅で見かけ、親しげに話していた人は同じ会社

の人ではなく、付き合っている人だと打ち明けられたのです。その人とは

もう15年にもなるという事でした。

私と付き合ってからも、二人で旅行に行ったり自宅にも泊まったりしてい

たそうです。親父さんの奥さんには会社の同僚だと紹介し、気づかれる事

なく二人の仲は続けてこられたのです。

いつものように親父さんの家に泊まった夜中、二人は真っ裸で重なり会っ

て寝てた、そこを奥さんがトイレに行った時、戸の隙間から見てしまった

らしいのです。

奥さんは女の勘というのか、何か二人の仲を普通ではないと感じていたら

しいのです。今回は決定的な行動を目撃され、朝になってどういう事なの

か責められたとの事でした。

そして親父さんには知っている用事以外は出掛けない、男性からの電話に

は取次しないと約束させられたそうです。今迄は奥さんが出ると「ご主人

お願いします」と言うと「父ちゃん電話だよ」と言って直ぐに代わってく

れてました。

 

親父さんはもう逢えなくなってしまった、ゴメン、悪い、悪いと何度も言

いながら泣いていました。

私は話を聞きながら複雑な気持ちでした。

親父さんにとってたった一人の自分だけだと思っていたのに、付き合って

いた人がいたなんて、信じられない思いが複雑に絡み合って頭の中は混乱

してました。でも目の前で泣いている親父さんを見てると、逢えなくなる

悲しさ、寂しさが襲って来て二人で抱き合い号泣しました。

 

あの日から何度か親父さんの家を訪ねてみました。

家の前を車でゆっくり走っては庭に出てないかな、車を遠くに置いて家の

前を歩いて親父さん出て来て、「来たよ」と叫びたい想いでした。

 

暫くの間空虚な日々が続き、なかなか気持ちの整理がつきませんでした。

でも現実に戻ると、子供達の成長と共にかかる教育費、ローンの返済など

しなければならない事が肩にのしかかってきてました。

それからは仕事に没頭、いや忘れる為に身を惜しんで働いたような気がし

ます。

 

これを機に男の世界から暫くの間遠のいていったのです。

今の彼に巡り逢うまで。

 

続 く









トップ アイコン目次へもどる      「体験談一覧」へもどる
inserted by FC2 system