倉爺さんの体験談 63            .




生い立ちの記




第六章 独身(東京)(4)



居候の身分ですから部屋の隅で蹲り、家に有った本を読むのが唯一つの楽

しみでした。姉さんは産後の肥立ちも良く、3日目には起きて家事を始め

ました。口煩い姑が姉自身と倉爺が世話に成るのを気遣って、ゆっくり休

んでいられなかったのでしょう。

 

砂を噛むような朝食が終わると街の見物に出掛けて近場を一回りして帰り、

部屋の隅でまた本を読んで過ごします。

 

「居候置いて合わず、居て合わず」と、昔からの言い伝え其の通りでした。

姑は怒りはしませんが口五月蝿くときどきチクリと嫌みを言います。産後

の床に付いてる姉の世話や、遅く帰って来る義兄の世話、オマケに居候の

面倒まで・・・・

嫌だからって田舎にも帰られず、職場も見つからず、金銭もないから手も

足も出ず、ひたすら我慢我慢・・・・

 

1週間後、従兄弟の人がT市にある電気屋が住み込みの小僧が欲しいと聞

いたということで、倉爺に返事を求めてきました。即座に行くと返事をし

たら「善は急げ」で早速、明日行く事になりました。

職場が決まり、居候から開放されて、嬉しいやら、心配やら、複雑な心境

でした。

 

 

 後 記

倉爺はどんな星の下に生まれたのか。東京の最初の日に姉がお産をして、

客人が来て一緒の布団に寝て、マラをマサグリ合い、偶然とはいえ、縁が

深く関わりあいながら生きて行くのか。もし本当なら胸の奥底に秘め温め

てゆくしかない。



                                        ( 続 く )








トップ アイコン目次へもどる      「倉爺さんの体験談一覧」へもどる
inserted by FC2 system