冬の旅


                                         魔羅尊 さん



                            (本篇は2009.2.8「でんでん虫」に掲載されたものです)


そう あれはボクが研究所勤務の終わりに近い頃だったでしょうか

先輩が定年退職でお辞めになる冬のことでした。

いつも暗い表情のひとでしたから、少し心配をしていました。

恒例の「近場で一泊の忘年会」を「先輩を励ます会」に切り替えて温泉地

のホテルで鴨がメインのフレンチのコースを組みました。

暖炉には香りの良い薪が茜色の羽衣を広げ フロアのグランドピアノは控

えめに冬の歌を染み渡らせていました。

コースのあとは和室の広間で賑やかなプログラム。そしてお開き。それぞ

れ三人部屋四人部屋に戻って温泉と寝酒。

 

主役の先輩とボク、それにもう一人が同室。お風呂に浸かって部屋に戻る

ともう一人はお酒の酔いで白河夜船。ボクと先輩は並べて敷かれた布団に

入りポツポツ話しました。

「たのしい 良い思い出を残してくださいね」

「ありがとう」

 

しばらく無言の時間があって、いきなり先輩がボクの上に被さってキスを

してきたんです。

「な、なに!」思いもかけぬ先輩の行動にボクは混乱して 彼を抱きしめ

てキスに応えておりました。

ボクが同性愛の傾向を持つことなど誰にも気取られた覚えはありません。

しかも先輩のコトは唯の仕事上のお付き合い、好きなんて思ったことなど

一度もありませんでした。

 

なのにどうしたことでしょう。ボクは彼のキスに翻弄されていました。柔

らかい唇の包み込むようなソフトな吸引。キスと言えば舌も唇も尖らして

吸いまくり押し込まれ なんてことばかり・・今まで経験したことの無い 

柔らかな雲に漂う浮揚感。こんなキスを長年待ち焦がれていたと体が燃え

上がりました。もちろんペニスは布団を突き上げる硬さで痛いくらい。

 

隣で眠るもう一人に気付かれる危険もどうでも良くなって、ボクは先輩の

身体の重さや彼の太い骨格に痺れておりました。二の腕を抱きしめると外

見からは想像もつかないがっしりとした骨組みが男らしさを堂々と誇って

いるのです。その骨の太さにさえボクは身震いするほどの性の高まりを覚

えておりました。

 

ボクの反応で迷いもためらいも消えたのでしょう、彼はボクの布団と浴衣

を引き下げて、いきなりペニスを口に含んだのです。そしてやっぱり、キ

スと同じソフトでやさしい愛撫が!

ボクは快感の頂点まで突き上げられて喘いでおりました。

「彼にもこの快感を」体勢を変えて69に持ち込もうとするのですが、彼は

拒んで一方的にボクの快感をラストまで突き上げようとするのです。ボク

は体勢を変えて無理やり彼を組み敷いて唇から喉広い胸引き締まった腹部

そして・・・股間を外して太腿と腰の両サイド。心をこめて唇とソフトな指使

いでアタックしました。でも・・・ 快感に身悶えする様子と裏腹に・・・

 

彼のペニスはうなだれたまんま。

そういえば彼には子供が居ないと聞いておりました。「そうだったの!」

彼の今までのコトがすべて解った気がしました。

なんだか彼に済まなくって・・・ ボクだけが快感を放出するのが悪い気がし

て・・・

彼の浴衣の乱れを直して並んで眠りに着きました。手だけを握り合って。

 

それから退職の春まで、何度か会社のガレージや人気の無い場所で抱き合

ってキスだけの切ない交情を交わしておしまいになりました。

 

アレ以来あんなキスとは再びめぐり合うことも無く、骨太の腕を掴む昂ぶ

りにも無縁のまんまです。

 

「肌が合う」よく聴く言葉ですが、世の中にはホントそんな相性が存在す

るのだと知りました。 せめて もう一度 せめてもう一人 あんな相性

の方に巡り会いたい 

今度は互いに欲棒をしゃぶりながら愛し合える そんな出会いを求めて 

さまよって 彷徨って ボクの冬の旅は続いているんです。

 

その後その先輩とは? ええ、何度かOB会の宿泊なんかで同席するチャ

ンスは作ったのですが・・・ とうとう再び応じてくれることはありませんで

した。 

木枯らしと忘年会のシーズンになると 風に踊らされて転がって来る落ち

葉が あの日のこと載せて来るんです。

乾いてカサカサの くちびるに北風か沁みるんです。 おー 寒い! 

今夜の焼酎はお湯割りだ! 







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