メタボ爺さんの体験 №2                  .




天然温泉『すかっとランド』にて



(2) 世界一のかわいいじいちゃん



風呂からあがって、脱衣所の壁に据え付けられた扇風機の前で体をふ

いていたとき、視線を感じて振り返ると、近くに二人連れのじいさん

がいた。二人とも70歳ぐらいに見えた。二人は、もうほぼ着替え終

わっていた。

視線の元は、そのうちの一人で、連れのじいさんよりも小柄で、ほど

よくおなかが出ていて、しびれる程のかわいいじいちゃんだった。思

わず、こちらもニコリと笑顔を返していた。

 

気持ちの高ぶりをおさえて、何とか体をふき終えたあと、そのままで

いる訳にもいかないので、じいちゃんの視線を感じつつも、ちょっと

勇気を出して、黙って越中ふんどしを締めた。知らない土地だから、

隠すこともないと思った。むしろ、じいちゃんに見てもらいたかった。

それを、じーっとじいちゃんが見ていた。

 

やおら、じいちゃんが連れのじいさんに向かって面白いことを言い出

した。

「ほら、儂の腹は丸くて可愛いだろう」

かわいいじいちゃんの声は、とても穏やかで素敵な甘酸っぱい声だっ

た。私のちんちんに少し芯が入ってきた。どうしよう。

問われた連れのじいさんが、冗談じゃないよという顔で言い返した。

「何言うやら。太り過ぎだ。もっと痩せにゃあ」

そう言われたじいちゃんは、違う違うと言わんばかりに首を振りなが

ら、突然、私に向かって声を掛けてきた。

「ねえ、このぐらいの腹なら心配ないよなあ」

 

突然のことなので驚いた。まさか、少し離れたところから話しかけら

れるとは・・・。私は咄嗟に作り笑いをして、

「全然問題ないですよ。羨ましいほど健康体に見えますよ」

と答えた。かわいいじいちゃんが嬉しそうにほほ笑んだ。世界一、か

わいいなあ、と心底から思った。

 

連れのじいさんが、

「いやなに、もう年だからなあ。このままだと病気になるぞと脅かさ

ないといけねえんだよ」

と不機嫌そうな顔をして、脱衣所から出て行った。本館の方で、カラ

オケ大会があるらしい。どうやら既に申し込んであるらしく、そそく

さと出て行った。

 

脱衣所には、着替えの終わったかわいいじいちゃんと、越中ふんどし

ひとつの私の二人だけになった。

 

(続く)










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