すばるさんの体験談 1                    .




めざめ  .



小学生の頃、僕の家は中学校のすぐ隣でした。学校はいつも中学生達の元

気な声にあふれていました。僕たち小学生は、ドキドキしながら、時々中

学校の敷地内に入り込んで遊んでいました。ある日職員用の自転車置き場

で遊んでいると恰幅のいいやさしそうな先生が「もう、帰りなさいよ」と

いって、そばにあったビッグバイクのエンジンをかけると颯爽と出ていっ

たのです。その時のショックにもにた感覚が「恋」だとは知りませんでし

た。その日から、僕は学校から帰るとすぐに中学校へ行って、その先生の

姿を追うようになったのです。夕方までクラブ活動の先生の姿を追って、

うっとりとしていました。少しお腹の出た運動着姿も一段と素敵でした。

僕は家に帰るとすぐに自分の部屋に入り毎日一生懸命祈りました。「神様、

中学校に入ったらぜったい、あの先生のクラスに入れてください」と必死

にお祈りしました。すでに2年生の姉に先生の名前を聞いていました。そ

うして毎日毎日先生にあこがれて、小学校を卒業したのです。

 

運命の中学の入学式、ああ、僕は斉藤先生のクラスではなかったのです。

がっかりでした。でも、中学生になったのだから、先生の姿をいつでも見

られます。胸の苦しさは相変わらずです。そして僕は2年生になったらぜ

ったい斉藤先生のクラスになれるようにお祈りを続けました。苦しかった

一年は終わり、2年生の始業式です。もう僕は天にも昇る気持ちでした。

あこがれの斉藤先生のクラスになれたのです。僕は先生のすべてが好きで

した。ちょっと色黒で、黒縁のメガネをかけ、背はあまり高くなく、ちょ

っとお腹も出ています。襟足はいつも短くカットされていて、とてもおし

ゃれで、女子生徒にも人気がありました。

 

僕にはとてもひょうきんなゴンという友達がいて、いつも先生と相撲を取

ったり、先生にいたずらして怒られたりしていました。僕はゴンといつも

一緒なのに先生と相撲も取ったこともなく、僕もゴンのようになれたらな

あーとすごく羨ましかった。先生に注目してもらえるように、一生懸命勉

強して、先生に褒められたくて運動も一生懸命しました。そのせいかクラ

スではいつもトップクラスでいられました。

 

ゴンとは近くの川に二人でよく釣りに行きました。斉藤先生も釣りが好き

で、時々その姿を見かけていたのです。その日はゴンは用事があって早く

帰り、僕はもう少し一人で釣りをしていると言って別れました。いつもの

ポイントで釣り糸を流していると突然、斉藤先生が現れたのです。「釣り

が好きなんだね」といって先生は僕のそばに立ちました。僕はドキドキし

て、頭に血が上ってしまい、何も話せなくなってただうつむくだけです。

川の流れる音だけが大きく聞こえ、随分と長い時間がたったような気がし

ましたが、実際は数分のことだったと思います。僕は釣り竿をたたみ、や

っとの思いで「今日はぜんぜんだめでした・・」と小さな声でつぶやくよ

うに言って、草むらにへたり込んでしまいました。先生も僕の隣に腰を降

ろしました。

 

先生はそっと僕の肩に手を回すと、「君の視線はいつも感じているよ、先

生が好きか?」とのぞき込むようにやさしく話しかけてくれました。先生

は干し草のようなとても気持ちのよい匂いがしました、そのとたん先生の

顔が突然大きくなったかと思うと、先生が僕の顔を両手で抱え込むように

して、そっと僕の唇に触れたのです。一瞬何がおきたのか理解できません

でした。先生は僕をじっと見つめ、その大きな胸に抱きしめてくれました。

そして「君の人生はまだ始まったばかりだ。本をいっぱいよみなさい」と

いって立ち上がり、すこし薄暗くなってきた、田んぼ道を並んで帰りまし

た。家に帰ると母にはお腹が痛いと言ってすぐに部屋にこもってしまいま

した。明日学校へ行くのがすごくつらいことのように思えて悲しくなりま

した。「先生・・」とそっとつぶやいてあの干し草のような暖かな先生の

匂いと、甘い先生の暖かい唇の感触を思い出して幸せな気持ちでした。

 

その後も先生は僕に優しく接してくれましたが、クラスの皆んなと一緒で

それ以上のことは起こりませんでした。僕もあの日のことは誰にも話さず

心の中で先生を慕い続けていました。大好きな先生は僕が中学卒業の時に

転勤して行きました。不思議なことにあれほど胸が苦しいくらい好きだっ

たのに、先生のことが忘れられない苦しい時代はそう長くは続きませんで

した。新しい高校生活は別な意味で刺激的で、子供から大人へと大きく成

長の時代だったのだと思います。







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