不調とは


                                         立花吾朗さん 



好ましい相方に巡り会うことの如何に難しいことか……。不調に終わった例です。

ある日、著名な医師による医療関係の講演会があり、出掛けた時のこと。

「いつもは、家で何をしておいでですか?」

【そうですね、趣味らしい趣味もなく毎日ボケーとしておりますよ】

偶には外の空気を吸いたいとの思いから、この講演を聴きに出掛けた。

その折、隣の席に素敵な紳士がおられ、どちらともなく声を掛けたのだった。

「我々の時代は仕事に追いまくられていて、土曜も日曜もなかったですよね」

【私も同じですよ。今はネットの世の中、何とか付いていきたくて勉強中なんですよ】

「この会が終わったら、少しだけ付き合ってくださいませんか。もう少しお話しを伺いた

いし……」

【いいですよ。久し振りに外で一献頂いて、今日一日を有意義なものにしたいなぁ】

「じゃあ決まりですね、安くて旨くて手頃な処を知っていますよ、ご案内します」


相性が合うような気がして話も弾み、それから何回か飲み会をすることになった。

「老いのときめき」の最初に[誠実][絆][信頼][愛][おもいやり]なる言葉が並んで

いる。なるほどと思い、この順不同を自分なりに順序を付けてみた。

誠実→おもいやり→信頼→絆→愛 となって成就するのでは考えた。

そんなお仲間発掘作業も道半ばで、「リスク、不確実性、そして想定外」となることが

挟まってきたりすると自然消滅となってしまう。この世界、所期の欲望を満たすのには

幾山も越えなければならず、難題が多いのだとしみじみ思う。


話題も広範に亘り、お互いを理解する上での手掛かりにしたい思いは当然のこと。

そんな中、如何にして話題を本題に向けるかそのタイミングを推し量っていたのだが、

彼は突然酔いも後押ししたのか、抑制の程度が弱くなったのだろう、何か訴えるよう

な哀願するような表情を見せたのである。

柔らかい物腰、所作は明らかに受動的、その様子を見たことで展開は大きく前進する

と確信したのだった。


彼のこの道の歴史が語られた。

【五十代前半で東京へ単身赴任、潜在的に眠っていた男色系の欲望が独り住まいの

開放感から、誘惑には勝てずこの道に足を踏み入れたのだ。ある日会社の宴会を終

え、○橋駅のトイレに立ち寄ったところ、酔客で混み合っていたので、奥へと入ってい

った。

出くわした光景は、初老の紳士が一物を勃起させて、しきりに左右を気にしている様

子。

胸の高鳴りを押さえることが出来ず、何気なさを装い紳士の横で用を足すことにした

が、容積を増した我が息子はなかなか外に出せない状態になっていた。普段は押さ

えている衝動が、強い欲望に占領されて無制御になり、とっさに自分では考えられな

いほどの決断をしている自分がいた。隣の紳士もお仲間と察したか、お茶してお話で

もと躊躇なく小声で囁き誘われた。その日は何ごともなく、後日改めてと別れた。その

後定年で田舎に帰るまで、何回か会ったのですが、その老練なテクニックで未開の初

心蕾みが開発されていく課程で、激痛のあまり苦痛だったアナルセックスも徐々に快

感へと変化し、何時しか求めるようになっていた。これが性なのでしょうかね】


想定外だったのは、誠実そうに振る舞っていた彼だったので信頼していたのだが、意

外なことに高齢者同士の人間的お付き合いは二の次で、強烈なセックスをひたすら

追い続けその為の相方を探していた節が見え見えとなったのだった。


自分が求めていたものとは、相当の乖離がはっきりとして意欲も萎えてしまい、この

話は成就を見ずに縁なしと判断せざるを得なかった、愛に到達すること無く。矢張り愛

を伴うほのぼのとした付き合いにしたいから……

                             (終)




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