もう恋は出来ません


                         山田大郎さん 作



「百歳まで入れる入院共済」は三年目を迎えて、お蔭様で順調に伸びてい

ます。

 

六十五歳以上になったら都民、各県共済や全労災よりも掛金が安くって、

入院給付金が格段と違います。

 

これらの共済は三十年以上前に設立されており、六十五歳以上の加入者は

数百万人と予想されますから、ここだけでも大変な潜在需要があります。

 

私は役員の一人として月に一万枚のちらしを撒くボランティア活動をして

おり、週に一、二回公団等の団地に出かけるのですが、約四時間の作業で、

一万五千歩前後歩きます。時折ベンチで日向ぼっこをしているお年寄りに

話しかけて、PRと休憩をしますが、皆さんから「お元気で羨ましい」と

言われるのです。

 

先日とても感じの良いご婦人と電車に乗り合わせました。「この電車はひ

ばりヶ丘に停まりますか」と聞かれました。

 

見ると竹網の籠、その内側にプラスチックの箱、そしてチワワが覗いてい

ました。可愛い犬ですねと誉めたら、出かけには何時も連れて行く、泊ま

る時にはお店に預けて、地震の時には預けておいて助かりましたと話され

ました。

 

もし家に置いていたらどんなに怖がっただろうと、以来必ず預けるように

したのだそうです。

 

「孫よりも可愛いと思うことがありますよ。ペットを飼いだすともう恋は

出来ません。ペットは裏切りませんから」と一気に話されたのです。

 

私がそれではこれ以上口説いても無駄ですかと言ったら、「あらそんなこ

と・・」と、笑い出して「お元気ですこと」と言って下さったのです。

 

ひばりに用事で行くと言うから、お茶を誘っても無理と判断してお別れし

ました。

 

「来る時に男の人に話しかけられたのよ。それが白髪ぼさぼさで、よれよ

れの作業着、そして荷物を曳いたお年寄よ」、こんな話でランチのつまに

されたことでしょう。

 

郵便受けにちらしを入れて回りながら、さっきのご婦人の「恋は出来ませ

ん。裏切りませんから」が頭から離れませんでした。

 

晩酌を始めると、家内が私の横に枕を置いて、保冷剤をタオルで包んでお

でこに置いていました。

 

くも膜下出血の大手術でも家事はこなしていますが、頭痛が激しいのだそ

うです。医者からは「頭を半分切って、切れた血管がクリップで止めてあ

って・・・、暫くは我慢するしか・・」と言われたそうです。すると寝息

をかき出しました。ああ良かった、寝付けたようだと、おならをぷぅーと

したのですが、目を覚ましません。

 

以前なら「失礼ね!」と怒って部屋を出ていったのですが。そこでもう一

発出しましたが、安らかに寝入っていました。怒られないと寂しく感じま

した。

 

元気な時に豪華客船での旅行を話すと、家のことが心配ですからと断られ

たのでした。

 

今では自分が元気で酒が美味しく、家内の頭痛が和らいでいくことが、我

が家のささやかな幸せです。

 

たまりばの会報をめくりながら、寝床で読むかと。「あとがき」を見てい

やー驚きました。左手京子さんの訃報。

 

三浦先生に電話したら、肺がんでお亡くなりになったとのこと。会おう会

おうと思っていた方とお会いできないで残念で堪りません。勘ぐらないで

下さい。

 

ハイキングの昼食で韓国の焼酎、まっかりをすすめられるままに飲んだら、

歩くのが遅れて、彼女に駅まで付き添ってもらったことがありました。

 

酔っ払った私の話に「そんなことは飲む前に話してよ」と、あの独特の声

で笑われたのです。

 

そこで謝ってお礼をしたいと思っていたのですが。お会い出来なくなって

残念です。ご冥福をお祈りいたします。

 

「こちらの世界は戸籍が無くって、さっぱり分からないの。私がたまりば

のプラカードを持って船着場で待っててあげますよ。なるだけ歳の順に来

てね。
山田さんは奥さんを大事になさって。けらけらけら」。こんな情景

が浮かびます。

 

癌か、そうだ新年会の誘いに、癌で入院するからと断った友人を思い出し

ました。電話を掛けたら本人が「よー」と出てきました。

 

大腸癌だったそうですが、手術しないで太い注射針で癌細胞を吸出す治療

を受けて、二ヶ月で退院出来たのだそうです。

 

先日テレビでヘルニヤ治療の番組を見たら、この治療で軟骨を注射針で吸

出していました。二時間強の治療で直ぐに歩けるようになるそうです。

 

癌も脳、肺そして膵臓は助からないようですが、後は何とかなる時代にな

ったようです。

 

さて先日所属する会の総会に出て、これまた驚きました。二月の新年会で

痛飲した先輩が、三月脳梗塞で即死されていたのです。享年七十九歳とか。

 

新年会の時に左指に包帯をされていました。お聞きしたら昨年奥様がお亡

くなりになって、炊事中に指まで刻んでしまったと。お悔やみを言ってお

気をつけてと、グラスを傾けたのでした。

 

懇親会ではもっぱらこの方の話、奥さんに逝かれて気を落として深酒され

ていたようで、男は弱いけど女性は強い、気持ちの切り替えが早いと言う

ことでした。

 

女性は寂しがるのは束の間で、直ぐに第二の人生になじんでいくと言うの

です。旅行、ハイキング、ダンス、カラオケ等とか。

 

そう言えばたまりば、にちみんや健康体操の単身女性の方、皆さんお元気

ではつらつとされていますね。

 

市の老人憩いの家でも、女性はにぎやかなのに、男性は寂しげです。

 

単身女性の皆様ペットは飼わないで下さい。「ペットがいるから恋は出来

ません」、そんな方が増えると困ります。

 

ペットは単身男性の敵と言うことでしょうか。せめて小鳥にしてね。

 

                            終わり







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