突然の出会


                                         立花吾朗 さん 



ある日、1通の葉書が配達されてきた。昨今はMailの普及で親書の交

換はめっきり減ってしまったので、とても珍しく思い即座に差出人を確認

した。そこには現役時代に取引先の担当者として仕事上関わりのあった懐

かしい名前が丁寧な文章と共に書かれていた。年齢は羽田進一より5歳ほ

ど年長者かと推察し好感を持っていた。月に3度の定期的来訪をほのかに

心待ちにする程だった。そんな過去の日々を思い浮かべながら葉書を読み

進めたのだった。そこには、最近になって「どうしてもお会いしたいと思

うようになり、昔話や近況などお話できれば、嬉しいのですが……」と結

んであった。進一もさしてお断りする理由も無く、お受けすることとし早

速の葉書を書いたのだった。

その日、最寄り駅に彼田中さんを出迎えた進一。

「お久し振りです田中さん、お元気のようですね」」

「部長こそ、お変わりなくお元気そうで何よりです」

僕は羽田進一68歳、先様は田中稔男さん72歳。 

退職後、暫く音信不通だった知り合いと、このように駅頭での再会から、

親密なお付き合いが始まったのだった。

僕が田中さんを一見して感じたことは、予想通りとても魅力的な好々爺風

な風貌へと年輪を重ね、しかも好みのタイプだったことに運命的なものを

感じて、この交際は是非に成功させたいと思ったのだった。

 

型通りの挨拶もそこそこに、近くの喫茶店で心情などを聞かせてもらうこ

とにしたのだが、田中さんは何処かにぎこちなさと気恥ずかしさを全身に

現して、言い淀んでいる風だった。思い返せば、現役の頃、酒席でのこと

だった。酔いも手伝って、進一から自分の太股にさりげなく手を置かれた

瞬間に、もしや“お仲間?”と察したのだという。しかしそれ以上、取引

関係で有利に立つ進一へのアタックは、とても推し進める勇気が出なかっ

たのだと。

でも、何時も笑顔で応対してもらった進一のその誠実な人間性に惹かれ続

けており、退職後も悶々とするばかりだったとのこと。

とは言え、今日はこんな関係での初対面、僕としても、お付き合いをする

上での自分の考えを忌憚なく告げて、その上で継続性のある老後の人生を

豊にするようなものに構築すべく、双方納得のもとで進めたいとの思いが

強く、先ずその旨を伝えたのだった。

「今からザックリとお伝えしますね。僕はタチを通しており僅かなS寄り

だと思っています。だから、お相手には当然ウケであり少しMの方を望ん

でいるのです。それにタチはチンポをお相手のアナル挿入、ウケはそれを

受けて、二人が合体し身も心も一つになりたいと思っています。タチはウ

ケに対して、少しでも気持ちよくなって欲しいと願っているものなのです

よ。でも、高齢になっている現在、勃起に翳りが出ていますが、ED勃起薬

で充分対応が可能ですから、安心して身を任せてもらって結構です、大い

に楽しみましょう。説に寄ればタチは夫、ウケは妻という夫婦の関係のよ

うなものであると言われ、僕もそんな関係が望ましいと考えているんです

よ。100点満点の理想通りの相方など、存在するわけはありませんよね。

絶えるべきは絶えて、我慢すべきは我慢して、二人の関係を築いてゆく心

構えが大事なのではないでしょうかね」」

「田中さんに、いきなりこんな立ち入った話をしたのですが、どう受け止

めてくれましたか? 田中さんに大筋で共鳴してもらえるなら、多少の歪

みは如何様にも努力次第で克服できると思っています。何よりもこの二人

には信頼関係が育ちつつあるように思うからです。それはお互い物事に対

して誠実に対応するという基本が同じだからと思っています。会社を離れ

ると人との関わりが極端に少なくなって、日常が味気ないものになります

ね。そんな意味からも田中さんとのお付き合いうまくいくといいでのです

が……」

田中さんも嬉しそうに笑顔で、

「部長への長年の想いが通じ、とても喜んでおります。その優しさは思っ

ていた通りです。私は男色系の実践経験は無しに等しく、活字や画像で知

識を吸収していました。何かとご指導願いたいと思います」

「田中さんの意向を伺い、了解しました。相手の方から何か自分にないも

のを吸収して知識見聞を高め人生を充実させてまいりましょう。その一端

に双方望むSexがあるという位置付けが理想だったんですよ。田中さん、

この道の経験なんて必要ありませんよ。タチウケの基本形が固まっていれ

ば自ずとスンナリと楽しめますよ。兎角タチウケが不明確で付き合い始め

たケースで二人とも同時に受け入れ体制をとったという笑い話も聞きまし

たね。普段は普通の老境の友として自然に振る舞いますが、一旦閨入りし

た時は、その時から主従の関係、このスタイルを意識してくださいね。脅

かしているようですが、それが効果をより高めることになるんですよね。

そんな中多少の我が儘や要望など遠慮は要りませんよ。Sexの場面では、

感じたままを声に出して訴えてもらえば一層ムードも盛り上がるでしょう

し……。そんな関係で参りましょう。宜しくお願いします」

田中さん、顔をうっすら赤らめて「こちらこそ何卒宜しくお願いします」

 

この二人、ここまで事前の話し合いで詰めた内容を明らかした上で、充分

納得してのお付き合いであれば、先ず成功疑いなしというところか。

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