追 想


北南さん 作

第三章 校長の話

 

〔10〕回想 ①



私が田中校長の秘孔に深々と差し込んだ指先で硬いところをなぞると、彼

が善がり声を漏らす。その声の合い間あいまを縫って

「校長先生はどうして『おねえ言葉』を使うようになったんですか?」

と聞くと。

彼はわたしの巨根にしがみ付きながら教えてくれた。

 

「おねえ言葉」を使い始めたのが島田親父の願望だったことを聞いて愕い

た。

 

島田親父が当校へ転任して来て、切っても切れないような仲になってから、

ある日、つながりあって気持が最高潮になるのを見計らって親父がスポッ

ト抜き去って言ったのだそうだ。

 

 

「校長、続けてほしいか、なら、挿れてやるからこれからは本当の女にな

れ。わしは女とやったことが無いんだ。だから、あんたのこれがわしのオ

マンコなんじゃ。

わかるか?オマンコは女の持ち物なんじゃ。だったら、わしとこうして交

(ツル)むときは女になっているんだから、言葉使いも女になれ!」

 

わたしは驚きを隠してさらに彼の孔内をくじり、身を震わせて善がる校長

をみつめた。

一息ついた校長は続けた。

「そういわれるとわたしも女にしてもらっているのだから『おねえ言葉』

を使ったほうがムードが出ると思って使ってみたら、気持の良いのなんの

って比べ物にならないほどなのよ。

だから全然抵抗無くその言葉になじんだのよ。いかが?満ちゃだって気持

がいいでしょう?」

 

わたしは二の句が告げなかった。

黙っていたら校長が心配顔に聞いた。

「あら、満ちゃは『おねえ言葉』嫌いなの?困ったわどうしましょう」

わたしはそんなことより二人の馴れ初めのほうが興味があったので、校長

の問い掛けは無視して聞いた。

 

「それより島田先生とはどうして結ばれたの?」

「オホホホッそんなことに興味があるの?ちょっと長くなるけどいい?」

そう言って、校長がだんだん高いびきになってきた島田藤吾先生に、自分

が掛けてもらっていた布団を掛けてやりながら話し始めた。

 

 

「もう4年になるのよねえ。わたしがこの村へ初めて校長になって転任し

て来た翌年のことだったわ。

怖い先生だと言う触れ込みで、この熊親父先生が送り込まれて来たのよ」

と言って話し始めた。

 

「島田先生はあちらこちらの前任地で上司と衝突ばかりしている札付きの

不良教師と言う評判の先生だったのよ。

わたし怖かったわー。だってわたしって太ってはいるけれど、ひ弱で臆病

な人間なのよ。家にいても家内達の尻に敷かれているような男なの。

でも、わたしは校長だから、県の命令に背くわけにはいかないので、どう

したらいいか迷ったわ。

兎に角着任する前に一度お目にかかっておかなればと思って来てもらった

の。初対面のときは怖かったわ……」

                ◇

ここからは田中校長と島田先生の二人の関係の話なので、聞いた話を校長

を一人称にして書く。

 

札付きの教師と言う話を聞いて、怖気づいたわたしにひらめいたのは、平

素あまり顔を合わせないで済むような場所を受け持ってもらおうという考

えだった。

この村にはこの考えにぴったりの「分教場」と言う場所があったので、新

年度の人事異動で従来の担任と交代させることにした。

 

45歳の独身教師で、髭の濃い大柄な人間と言う程度の情報以外は、前任

地の校長からの低い人事評定と、その校長から漏れ聞いた彼の悪評だけで

しか判断出来なかったので、この人事案は、その時点では最適の案だと思

っていた。

 

始業式の5日前に彼に登校するように通知を出し、校長室へ来てもらった。

初対面のわたしの印象は意外だった。

確かに人相はすごい。無精ひげに埋め尽くされたようなごつい顔の巨漢に

圧倒されそうになったわたしだったが、前任地の校長からの情報とは、ど

こか雰囲気が違ったのだ。

 

その巨漢が口を開いた。

「初めてお目にかかります。島田藤吾45歳、未だに独身です。

今日からよろしくお願いします」

野太いドスの利いた低音だった。しかし、声に圧倒されると思っていたわ

たしには、なんら威圧感は感じられなかった。

わたしをじっと見ている一重まぶたの目は、清らかに澄みきっている。

 

「ああ、島田先生ですね。始めまして、校長の田中留雄と言います。

こちらこそよろしくお願いいたします。

――ところで島田先生、着任早々ですが、君の勤務地についてお願いがあ

るのですが……。――誠に申し訳ないですが、本校には分教場があってそ

この管理が大変難しいのです。

――ですから君のようなベテランの先生にぜひ面倒を……」

つっかえ、つっかえここまでしゃべったところで彼が口を開いた。

 

「校長先生、ご心配なさらなくて結構ですよ。わしにはその覚悟が出来て

いますから……。前任地の校長に言われています。『お前のような上司に

たてつく教師は、わしらにとっては厄介者なんだ。今度の学校には分教場

があると言うから、その辺りへ飛ばされればいいんだ』って……。

わしもそれのほうが気楽で良いですから」

 

 

わたしはその言葉を聞いてホッとすると同時に、なにか大切なものを失う

ような気がして彼の顔をじっと見た。

涼しげな清らかな眼がわたしの胸の中を覗いているようで、急にドキドキ

し始めた。

「島田先生、本当にそれでいいんですか?」

わたしは自分の言っていることに驚いていた。

 

「校長先生、心配しなさんな。わしのような者は、そうした場所にいたほ

うが、学校の規律を乱さないから、好都合なんじゃ。アッいけない好都合

なんです。

じゃが、アッ、だが、どなたかに分教場の場所や、わしの宿舎を案内する

ようにしていただけないでしょうか」

「もち論それは明日わたしがします」

そう言いながら、またまたわたしは自分の言っていることに驚いていた。



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