築地の親爺たち


                                         抱念 さん 


第九話〜親爺の匂い


萎えることなく芯が入ったまま、嘉輔のちんぽが誠の下腹をえぐるように

突いている。それを嬉しいと思いながら、誠は嘉輔に抱きついて余韻に浸

っていた。

 

「邪魔するよ‥」

ふいに勇が佐三とやってきた。

 

「誠、可愛がってもらったか‥」

勇が訊いた。

しかしそれきり佐三と寝転がって抱き合い、佐三の口を吸いはじめた。

 

チュッ‥チュッチューチュー‥

キッスをしながら楊柳シャツのボタンを外してはだけると、勇は佐三の乳

首に吸いついた。

煮上げた大納言の色合いさながらに、大粒の乳首がいやらしい顔をして白

い胸に張りついている。その様は勇でなくても、思わず舌舐めずりしたく

なるだろう。

その大納言を甘噛みして引っぱって、舌の先でねぶり、ざらつく腹でなす

りつける。

佐三はたまらずビクビクッ、体を震わせ、くぐもった声を上げる。

その反応を見届けると、勇はまた佐三の乳首をなぶってこする。いつもな

がらにそうして佐三を可愛がった。

 

もう何回してやったか知れない。何十年の間、何度したって初めて抱いて

やった時と同じように、勇の愛撫に佐三は跳ねかえって悦ぶ。

そんなふうにいつまでも初々しい佐三が、勇はかわいくてしようがなかっ

た。

 

その佐三の腰にかろうじてまとわりついている藍染め越中を盛り上げて、

芯が入った魔羅が隙間から覗いている。

そこへ嘉輔の手がおずおずと伸びて来た。

 

「嘉ァさん、遠慮は要らねえよ‥握ってやればいいさ‥」

勇は前垂れを捲ってやった。

 

「こっちへ来なよ‥」

佐三と自分の間に隙間をこさえて招いた。

 

「誠、お前も来たらどうだ‥、イヤじゃなけりゃな‥」

 

「ンもう‥いじわるだね、親方は‥」

 

「ほれっ‥すねてねえでこっちへ来い‥、佐ァがいいのか‥それともオレ

か‥」

 

「親方がいい‥」

きっぱり言った。

 

「佐ァさん、怒ちゃイヤだよ‥、佐ァさんのことも好きなんだからね‥」

気遣える男だ。

 

「誠くんはいい男じゃのぉ‥、そうじゃろ‥、あんたはほんにいい男じゃ

‥」

嘉輔がジィっと誠を見すえてそう言う。まだ誠に後ろ髪を引かれている風

情だった。

 

「相変わらず嘉ァさんにモテモテだな‥、おまえさんもニイさんが好きか

い‥てっきり俺だと思ってたけどな‥ふっふふふ‥」

佐三が混ぜっかえした。

 

「そうさ、いい男だからおまえさんが惚れたって不思議はないさ‥、あり

がとうよ、ニイさんのこと好いてくれて‥」

今度は神妙だ。

勇を好いてくれたことが佐三は嬉しかった。

 

「ほれほれこっちへこい‥」

手招きされて、勇の隣り、端っこの布団を指した。

誠はそこに寝転がるとすぐさま勇に抱きつく。抱きついて頬ずりし、勇の

匂いを深く吸い込んだ。

 

鯉口シャツへの移り香、老人の匂い。

今どきは加齢臭とかいう嫌なことばが使われるけれど、その匂いも人さま

ざま、妙な言い方かも知れないが、勇の匂いは、だらしなさは微塵もない、

年寄りくささだった。

入浴で隅々までこすって脂垢をきれいさっぱり流す。そして汗をかいたら

すぐに着替えて、いつも清潔なものに袖を通す。おかみさん健在だった時

の習慣そのままだった。

 

 

誠は年寄りの匂いにほだされる。

自分より三倍以上の年嵩、六十過ぎの作曲家先生が初めての男だったから

だろう。男の内弟子はただひとりだけ、誠は男色家の先生には格好の餌食

だった。後になって思えばそれが先生の目的だったのかも知れない。しか

し、そのおかげでこうしていられることを思えば、有り難いことのような

気さえして来る。

夜毎抱かれ、否が応でも先生の匂いを嗅がされ、その匂いに酔った。

例え相手が男だろうと刺激を受ければすぐに勃つ。そして果ててなおすぐ

また堅くなる。絶え間なく勃起させては男色の擂り鉢の底で待ちかまえて

いる先生の罠に自ら嵌まって行った。

イヤだと思ったのは初めて抱かれた時のほんの一瞬だけ。それを過ぎたら、

その先は自から望む桃源郷。

夜毎先生に抱かれた。

 

誠は勇の匂いに酔っていた。

そのおかげで、さっき果てたばかりなのに、あの頃のような勢いを見せて

また勃起させている。

そして、その猛々しい魔羅を握りしめると、勇もみなぎった。

 

「ああぁ親方‥うれしい‥こうしたいってずうっと思ってた‥、ああぁう

れしいぃ‥」

誠は泣きだしそうだった。

 

「そんなにワシが好きだったのか‥」

 

「知ってるくせに‥またいつもとおんなじなの‥、いいよ、なに言ったっ

て‥親方には佐ァさんがいるんだもの‥、愚痴なんか言っちゃバチが当た

るね‥」

 

それでもこうして勇が抱いてくれるのだから、誰になんの文句があろう。

誠はただ手放しで嬉しかった。

 

「佐ァは嘉ァさんとお楽しみだ‥、だからおあいこさ‥ゥフッ‥おめえは

まじめだなあ‥生真面目すぎるかも知れねえが‥、だからおめえをほっと

けな‥」

最後まで言う前に、誠の口へむしゃぶりついた。



                                                続 く 







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