築地の親爺たち


                                         抱念 さん 


第十話〜勇の思い


佐三が上野におもしろい店があると云って連れて行ってもらってからもう

どれくらい経つだろう。

初めて『祭』へ行った時、勇は誠の鯔背に一目惚れした。

そうしてしゃべってみるとまた余計に惹かれた。

しかしそのことを佐三と誠にはずうっと隠して来た。

 

んチュッチューチュチューチュッチューチュッ‥

勇は積年の思いを込めて、誠の口を吸った。

 

その粘っこいキッスは並みじゃない。きまじめな勇の執着心がひたひたと

押し寄せる。

下手をするとそれに呑みこまれそうで危ういけれど、一方ではその得体の

知れないものとひとつになって燃え上がり、燃え盛って燃え尽きてしまい

たいと、誠は思った。

 

「イタっ‥親方やさしくして‥」

強く舌を吸われた誠だったが、声を荒げることはなかった。

八十を過ぎた爺さまに、勇というただひとりの男に、すっぽり包まれてい

ると心にひっかかるものはなんにもなくなる。そうして心の鍵をはずして、

一切合切を勇に預ける。そうできることが、誠はすごくうれしかった。

 

“思いようやく叶う"

勇はそういう気持ちだったのだろう。

いかにもうまそうに、まるで誠のすべてがその口にあるかのように、一所

懸命吸った。吸って、舌で撫で、また吸って、唇で愛した。それはこれ以

上はもうあるまいというほどに、甲斐甲斐しく一所懸命に愛した。

 

誠はとろけそうだった。

 

「ああぁおやかたぁ‥」

 

その声を聞くと、勇は体を起こして鯉口シャツのボタンを外した。

すると彫り物が現れる。藍墨はすでに枯れているが、しかし、誠にはその

風情が堪らなかった。勇の人生が目の前に迫るようで、グッと来る。

勇がまた口を寄せてきたけれど、誠が止めた。

 

「もっと視たい‥」

六尺一本の勇の裸をまじまじと眺めた。

黒の地によろけた赤い縞の六尺が、シミのひとつもない八十歳の肌によく

似合っている。

 

こうして上半身だけに入れた刺青は、中途半端なのかも知れないけれど、

柄物の六尺を楽しみたかった勇には独自の美学があった。

胸から膝の上まで墨を刺すと惚れぼれするよな鉄火野郎になるのは分かっ

ていたし、実際そうしたいと思った。しかしそれだと柄物の褌が刺青とけ

んかするから、結局白晒しの六尺しか締められなくなる。それが勇はどう

してもイヤだった。

頑固ものの、江戸っ子だ。

 

「すごいっ、カッコいいッ‥、親方、また惚れちゃうよ‥」

言葉を呑んだ誠の目がぎらぎらしている。

 

嘉輔との一戦以来すっぽんぽんの誠は、体を揺するたび亀頭をゆさゆさ、

芯が入ったちんぽを揺らしていた。そうしてその照準が勇に向かう。

 

「なんだまた勃てやがったのか‥しかもワシを狙っていやがる‥、おめえ

ってヤツはどんだけスケベなんだ‥」

勇はその竿を握ってひと擦りふたこすりすると粘った汁がじんわり沁み出

る。

 

「やっぱり相当なスケベだな‥ふっふふふ‥」

上目づかいに誠を見ると、静かに笑った。

 

「んアッ‥」

親指の腹で鈴口に汁をなすりつけられ、亀頭の括れを弄われると、思わず

誠は腰を引いた。

 

「もうガマンできないよぉ‥親方ぁ、キスしてッ‥」

誠が色っぽい目をして勇を見つめた。

 

「バカ野郎‥おめえはガマンてぇものができねえのかよ‥」

口とは裏腹にキッスをくれてやった。

 

ン〜んチュッ‥

 

キッスをもらえて誠は心が沸きたつ。

目を閉じてただ口を半開きにしている勇。誠がするがままにまかせている

勇が、誠は更に愛おしくなってしようがなかった。

 

勇もまた誠のするがままにさせていることで、なにか不思議に満たされる

ものを感じる。一度は心を寄せたものの、佐三の手前そっと胸にしまって

忍んでいた。

だからこんなふうに堪らなくなるのかも知れない。

 

誠のするにまかせているうちに勇は漲った。

佐三と抱き合っていても今はそうそう勃つことがないけれど、若い恋男の

気をもらったことで勇の雄に火が点いたのかも知れない‥

 

「おまえの魔羅が食いたい‥ほれ立て‥」

あぐらをかいた勇の目の前に誠のちんぽが来た。

 

立った拍子に蟻戸渡りのあたりから押し出されたガマン汁がちんぽの先か

ら垂れて糸を引く。

「アッあぁ‥」

勇が声を上げて汁の下に手を出した。

 

「おめえのスケベ汁がもったいねえからなあ‥」

そう言って手のひらをペロッと舐めてちんぽを頬ばると、上目づかいに誠

を見た。

すると誠も勇を見ている。

勇は恥ずかしかったけれど、誠と心が通ったようでなんだか嬉しい。そし

て誠は誠でそんなふうな勇がまた愛おしくて堪らなくなる。

 

誠のちんぽは勇の口いっぱいに膨れて突き上げる。勇はその堅笛を大事に

大事に吹いた。甘咬みに強弱をつけ喉奥まで飲みこみ、また戻す。ゆ〜っ

くりゆっくりしたと思えば、今度は必死に素早く往きつ戻りつ‥。

そうして誠を愛おしんだ。

 

 

誠のちんぽをくわえているあいだじゅう、しょっぱくてネバネバのガマン

汁が次々吐き出され、潤滑油が潤沢に補給された。

ゴクリっ‥

自分の唾液と混じった誠の汁が口いっぱいになって、勇はそれを飲み下し

た。

 

その顔は喜色満面だった。しかもそれがあまりに穏やかなので、誠はとて

も驚いた。恍惚‥法悦‥そんな言葉が浮かんでくる。

しあわせな勇の顔を見て誠もまたしあわせを感じた。

 

その勇がちんぽを吐き出した。そうしてその唾液まみれのちんぽを鼻の脇

から目の上に置いて、金玉をせせり始めた。キッドのなめし革のようにし

なやかな玉袋の感触にうっとり。そうするとまたその恍惚に拍車がかかる。

 

「あぁ、ァいいぃ‥マコぉいいなぁ‥おまえの袋が気持ちいい‥アアァァ

ァ‥」

金玉を吐き出して今度は頬ずりしはじめた。右にも左にも何度も頬ずりし

た後、それだけでは飽きたらずに目に鼻、額にと顔じゅう玉袋のしなやか

さをこすりつけてうっとりした。

 

カポッ‥ジュルジュルッ‥ジュリュジュリュッ‥ズリュズリュ‥

そうしてまたちんぽをくわえ吸った。

 

 

勇は誠のちんぽをくわえて舐めて尺八吹いたら、金玉袋を顔に乗せふわり

撫で唾液まみれの玉竿顔中こすりつけ、遥か彼方あっちの方でずうっと遊

んでる。

しこたまの誠をひとりじめして、その誠を精いっぱい愛せることが勇はど

れほど嬉しかったか。

 

「ほれここへ来い‥」

勇にうながされた誠はあぐらをかいた勇を跨いだ。

 

父ちゃんに大事大事されて抱かれるでっかいナリの息子‥

どうしたって勇は誠がかわいくてしようがない。

真正面の誠をまじまじ見つめ、顔の造作をしっかり頭にたたき込む。

短く刈られた髪の感触を忘れないようにと頭をなぜる。

手にも誠を覚えさせようとしているか、目をつぶり顔を撫ではじめた。

そして、首のうしろに手をやり支えるようにすると、目を閉じて誠の唇に

口を重ねた。

 

あらためて吸う誠の口はうまかった。

口の粘液に自分の舌をすべらせる。スルスルと氷の上を滑るようで気持ち

良かった。気持ちが良くて勇はまたみなぎってくる。

 

満ちた勇を押し上げている褌を、誠は跨いだ脚の間に見つけた。



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