夕日丘


                                         夕凪さん 



その33 日曜日



豊がふと眼を覚ますと、黒岩さんが椅子に座って、お茶を飲んでいた。

「あ、黒岩さん。おはようございます」と豊は驚いて言った。

「白石先生、酷いじゃないですか・・・」と黒岩さんはむくれて豊かに言った。

「どうしてですか?」と豊は起き上がっていった。

隣を見ると、紺野さんは足を投げ出して軽くいびきをかいて寝ているので、布

団をかけてあげ、起き上がって、黒岩さんの前の椅子に座った。

黒岩さんはお茶を湯飲みに入れて、豊に進めた。

「ね、どうして僕が酷いんですか?」と尋ねた。

「だって、夕べは僕を布団に寝かせてくれたんでしょう?」

「ええ、様子を見に行ったら、あの、紫村さんとか言う人と一緒に座布団の上

に横になって寝ているんですから、風邪をひかれたら大変と、そばの布団に寝

かせてあげたのに・・・どうして、酷いというんですか?」と再び尋ねた。

「うん、だって、あのままこの部屋につれてくれればよかったのに」と黒岩さ

んが言った。

「あのですね、僕だってそうしたかったけどね、黒岩さんは重かったので、近

くのお布団に寝かせてあげたのに。それに、キスしてもぜんぜん身動きもしな

くって。つまらないからここへ戻りました」と豊が言った。

「え?キスしてくれたの?」

「そうですよ・・・・」

「ふうん・・・・」と豊がお茶を飲みながら黒岩さんの顔を見ると、物思いに

ふけっているようであった。

「ああ、よく寝たな」と紺野さんが起き上がって両腕を上に上げて言った。

「お目覚めですか?」と豊かが言うと。

「あれ、もう起きたんですか?あ、黒岩先生、どうしたんですか?」

「ああ、夕べは碁敵と遣り合っているうちに寝込んでしまってね」

「そうだったんですか、道理でここの部屋に来られなかったんですね」と紺野

さんが言った。

「ああ、不覚にもね・・・」と黒岩さんが言った。

「で、あの老人はどうされたんですか?」と尋ねた。

「まだ寝ていると思うけどね・・・」と黒岩さんが答えた。

「そうですか・・・」と紺野さんが答えた。

「じゃ、僕はこれから、ちょっとお風呂へ行ってきます。せっかくきたんです

からね。皆さんはいつでも来れるみたいですけどね」と言って豊はタオルを手

にして部屋を出て行った。

そんな豊の後姿を黒岩さんはにらみつけていた。

お風呂には誰も居なかった。

豊は大胆に浴衣を脱いで、脱衣籠に入れると、誰か1人もう先客がいるみたい

に、脱衣籠が塞がっていた。

戸を開けてはいると、浴場には誰も居なかった。

豊は不審に思って、露天風呂のほうへ行くと、露天風呂には誰かが入っている

ようであった。

『この旅館には我々とあの老人しかいないのだから・・・』と豊は独り言を言

って露天風呂に近づいた。

「おはようございます」と元気に声をかけて湯に入ると、先客は後ろを振り返

って、「待っていたんですよ」とにっこり笑っていった。

「え?どうして僕が来るとわかったんですか」と豊は驚いて言った。

「だって、地元の人はあまり朝風呂は入らないけど、外から来た人は湯を楽し

みに来ていますからね、多分、又会えるかなと思ったんです。でも、あまり遅

いのでもう諦めていたんです」と柴村さんは言って湯から立ち上がり、豊のそ

ばへ来て、豊の手を引っ張った。

その瞬間に、豊は夕べ紫村さんにキスしたことを思い出し、にわかにチンポが

反応してしまった。

気付かれないように、片手で前を押さえながら、豊はその老人、紫村さんに引

っ張られて露天風呂の湯船の奥へ行った。

湯気のお陰で、そこは死角になっていて、いきなり人が露天風呂に入ってきて

もすぐには見つからないという場所であった。

紫村さんは突然振り向いて、豊の前に跪き、豊の半立ちのチンポを屈んで口の

中に入れた。

「あ、そ、それは・・・」というのが精一杯でその後の興奮がチンポをいきな

り硬くした。

豊は紫村さんの頭を掴んで、立ち上がらせ、可愛い顔を眺めながらその愛らし

い口へキスをした。

しばらくして、口を離すと、紫村さんは豊の体へ抱きついてきた。

「今日はもうだめかもしれないけど、いつか又会ってくれますか、あってくれ

ますね」と何度もいいながら抱きついていた。

そんな老人の背中をゆっくりとなでてあげた。

 

「おや、ここでしたか?」と湯気の向こうで大きな声がしたので、二人は離れ

て声のほうへ歩いていった。

「おや。黒岩さん、どうされたんですか?」と柴村さんが言った。

「いや、白石先生がわしを一人にするんでね、後を追っかけてきたんです」と

黒岩さんが柴村さんに言った。

「一人ぼっちにしただなんて、紺野さんがいたじゃありませんか・・・」

「あんなのと一緒にいられるか・・・」と言って黒岩さんは湯船に浸かった。

紫村さんと豊もその隣に座って湯を楽しむことにした。

「で、紫村さんは、これからどうされますか?」と質問しながら、そばにいる

豊の体を黒岩さんはつねった。

あまりの痛さに思わず豊は声を出していた。

「ウッ」と豊は叫んだ。

「どうされたんですか?」と紫村さんは心配そうに豊を見た。

「いえ、なんでもないんです。ちょっと・・・」と豊は言った。

「そうですか、あ、黒岩さん、僕はね10時ごろのバスで帰ろうかなと思って

いるんです。ここへくるのももう最後かなと思います・・・」と悲しそうに言

った。

「え?どうしたんですか?」と黒岩さんと豊が交互にたずねた。

「実は、僕ももう年ですから、そろそろホームの方へ行こうかと思っているん

です。何しろ、体が動かなくなって家族から嫌われる前にね・・・。先日も友

達が脳溢血で倒れて、不随になってね、家族がいろいろと不満を行っているの

を耳に挟んだもんですから」と柴村さんが言った。

「そうか、それは大変ですね」と黒岩さんが同情した。

「だから、せっかく白石先生とお会いしたのに、もう会えないかと思うと・・

・」と悲しそうに柴村さんが言った。

「そんなことないですよ、現に、昨日白石先生はホームの慰問演奏会に行かれ

ましたからね。だから、わしらの町のホームなら皆で会いにいけますからね」

と黒岩さんが励ますように言った。

「そうですね、でも、黒岩さんは遊びに来てくれるかな?」と柴村さんが言っ

た。

「もちろん、行かせますよ。わしだって夕べの続きをしなくっちゃね」と言っ

て碁の話をした。

しばらく無言で豊は二人の会話を聞いていた。

突然、露天風呂のドアーがあいて、紺野さんが服を着たまま、顔をだして皆に

言った。

「ね、朝食の準備が出来ているのですけどね、皆さんお腹空かないの?」

「お、そうじゃ、朝食にしなくっちゃ」と言って黒岩さんが立ち上がり、豊も、

紫村さんも立ち上がった。

紺野さんの後を黒岩さんが歩いた。

そして、その後を豊が続き、紫村さんは豊の後ろから歩きながら、時々豊の背

中とお尻をなでまわした。

くすぐったいような、嬉しいようなおかしな感覚を受けながら脱衣場へ皆と一

緒に急いだ。
 



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