夕日丘


                                         夕凪さん 



その59 土曜日



赤部秀介はのどが渇いて目がさめた。久しぶりに入った温泉の所為か、夕

食に食べたものが塩辛かったのか、のどが渇いたみたいであった。

布団から起き上がり、周りを見回して、自分がホームではなく温泉宿に豊

たちと来たことを思い出した。

隣の布団を見ると、そばに寝ているはずの紫村さんがいなかった。

不審に思い、布団から起き上がると、隣の部屋から人が動く音と人がうめ

く怪しげな声が聞こえてきた。

秀介は不思議な思いにかられて、隣の部屋にひきつけられるように体を引

きずって、隣の部屋をさえぎっている襖まで行った。

襖に近づくに連れ、人の動く気配とうめき声がはっきりと伝わってきた。

秀介はこれから自分が見るであろう事が頭の中で描き出され、にわかに興

奮していった。

しかし、一方では見たくないと言う思いもあった。

豊があの紫村さんと・・・と思うと、嫉妬心が湧き上がってきた。

勇気を出して少し襖を開けて覗いてみると、全裸になった豊と紫村さんが

抱き合ってキスをしていた。

ほのかな明かりの中に浮かび上がる二人の姿に秀介は驚いた。

頭ではわかっていても、心はそれを拒否しようとしていた。

しかし、目は襖の隙間にくぎ付けになったままであった。

二人は何度も官能的なキスを繰り返し、ついに、紫村さんは豊のチンポを

加えておいしそうに尺八をし始めた、豊の口から歓喜の声が漏れ始めた。

それを見ている秀介は興奮し始めた。

しばらくすると、豊が紫村さんの尻を愛撫し始め、それに伴って紫村さん

が尻をふりながら、喜びの声をあげ始めた。

秀介はそれ以上見るに耐えなくなり、目を隙間からはずした。

しかし、耳に聞こえる二人の声は秀介を誘っているようであった。

落ち着きを取り戻し、再び隙間に目をやると、紫村さんは秀介の上にまた

がって、体を上下しながらうめき声を激しく上げていた。

紫村さんは豊が突き刺しているチンポから受ける喜びに翻弄されていて、

突き刺している豊も夢中になっていた。

男二人が、男と女がすることをしている。

秀介は自分の目が見ているものが信じられなかった。男同士でもできるのか?

疑問に思いつつも、二人の動作を熱心に眺めた。

そして、紫村さんの尻穴から受けている豊の喜びの声を聞きながら、秀介

は孤独を感じていた。

激しく声をあげている豊を見て、秀介はとてもがっかりした。

俺は豊にとってなんだろう?

二人のクライマックスを迎える声を聞きながら秀介は襖から目を離し、の

どの渇きも忘れて、再び布団にもどり、上布団を頭の上まで引っ張ってす

すり泣き始めた。

来るんじゃなかった・・・・

豊がふと目を覚ますと、周りはもう朝を迎えようとしていた。

隣に幸せそうに寝息を立てながら、紫村さんが寝ていた。

『しまった』と思いつつ、浴衣を身にまとい、紫村さんが風邪を引かない

ように布団をかけてあげて、襖を開けて、隣の部屋を覗いてみた。

懸念した通り、赤部さんの布団は空であった。

豊は廊下に干しておいたタオルを見ると、2つしかないので、自分も一つ

取り、大浴場へ行って見た。

脱衣場には一人の浴衣が脱ぎ捨ててあった。

しかし、大浴場はがらんとして、誰もいなかった。

豊は大浴場を通り越して、露天風呂を覗いてみることにした。

露天風呂には赤部さんが肩を落とし、両足を湯船につけながら寂しそうに

湯面を見ていた。

「おじいちゃん、おはよう・・・」と豊は明るく声をかけた。

「あ、おはよう」と秀介は小声で答えた。

「どうしたの?元気のない声をして・・・」

「なんでもないよ」と答えながら秀介は豊の視線を避けて、湯船の中へ入

った。

「ね、おじいちゃん、どうしたの?」ともう一度豊はたずねた。

「なんでもないさ」と答える秀介の声は震えていた。

豊は心配になって、湯の中に入り、豊に背を向けている秀介の肩に手をか

け、やさしく豊の方を向かせた。

「どうしたの?」豊は驚いた。

秀介は目に一杯涙をためていた。

「な、豊、俺は来るべきじゃなかったんだ、ここへ」と言った。

「どうして、ね、どうしてそんなことを言うの?」と豊は分らずに尋ねた。

「お、俺は、さびしい・・・」と言うなり、豊に抱きついて秀介は嗚咽し

た。

とっさのことに、豊は何を言っていいのかわからず、秀介が落ち着くまで

抱いていることにした。

少し、落ち着いたので、秀介を湯船の端まで引っ張ってきて、ふちに座ら

せて、再び聞いた。

「ね、いったいどうしたの? 理由を言ってくれなくちゃ、僕、何でおじ

いちゃんが苦しんでいるのかわからないもん」と豊はゆっくりと諭すよう

に言った。

「俺は、紫村さんのように、魅力もないし、おまえを楽しませたりするこ

ともできん・・・」と秀介はポツリと言った。

「そんなことないよ、おじいちゃんは僕にとって、とてもいいおじいちゃ

んで、僕は好きだよ」と言った。

「ああ、でもな、おまえは絶対に俺をあの紫村さんのようには扱ってはく

れんだろう?」

「どうして・・・」

「だって、俺は、男と男があんなことをするなんて夢にも思わなかったし、

あんなことができるなんて思いもしなかった」

「あんなことって?」

「夕べおまえと紫村さんが愛し合ったことさ」と吐き出すように秀介は豊

に言った。

「え?」と豊は驚いて言った。

「おまえはとても幸せそうだった。俺にはとてもできんことだ・・・」と

秀介は悲しそうに言った。

豊は困ってしまった。

まさか、あれを見られていたとは・・・。

「・・・・」豊は何と答えて良いかわからなかった。

「な、豊、俺だって今まで何もせずに生きてきたわけじゃない。男と女の

事ぐらいわかる。でもな、男と男の事は・・・」

「そうなの・・・」

「ああ、男同士がチンポを扱きあったり、尺八するぐらいは知っていたけ

どな、ホームでだって時々見かけるから」と言った。

「え?ホームでも?」と豊は驚いて言った。

「そりゃ、性欲なんて死ぬまであるんじゃないかな・・・」

「じゃ、おじいちゃんは?」

「そりゃ、俺だって。チンポが言うことを聞いてくれればな。でもな、も

う何年も言うことを聞いてくれんし・・・」

「じゃ、おじいちゃんは男に対して拒絶反応はないの?」

「どういう意味だ?」と秀介は豊の顔を直視して、尋ねた。

「つまり、男と一緒にいたり、男から触られたり・・・」

「俺はそんなことないさ、一度おまえのチンポをしゃぶったことあるし・

・」

「え? いつ?」

「ほら、いっしょにアパートで寝たとき」といって顔を真っ赤にして秀介

は顔を伏せた。

それを聞いた豊は秀介を立ち上がらせ、秀介の口をやさしく奪った。

「うっ」と言う声を出したが、秀介は豊を拒否しなかった。

豊を拒否しないとわかったので、豊は今度はゆっくりと唇を秀介の首筋に

這わしていき、時々耳たぶを口で愛撫したり、耳の穴に舌を入れてみたり

した。秀介は驚きながらも、豊から逃げようとせず、ぴったりと体を豊に

預け、少しずつあえぎ声を出し始めた。

しばらくして、豊は秀介の背中を平手でゆっくりとさすりながら段々と下

へ下ろし、尻を愛撫し始めた。すると、秀介もそれに答えるように豊の背

中に回していた腕を解き、一方の手を自分と豊の間で大きくなっている豊

のチンポに持っていった。

「???」

「どうしたの?」と動きを止めた秀介に豊が尋ねた。

「豊のチンポがこんなに硬くなっている」と驚いて言った。

「だって、僕はおじいちゃんが好きだし、おじいちゃんが魅力的だから、

肉体が反応しているんだよ」と豊が秀介の耳元で言った。

「ほ、本当か?」

「うん・・・」

「あ、ありがとう・・・」そういって、秀介は顔を赤らめながらも再び豊

を強く抱きしめた。



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